株式市場が下落する局面ではバランスファンドを選んでおくと安心だという話を耳にすることがありますが、最近のバランスファンドの値動きを分析してみると、皆さんが期待しているものとは異なる値動きにケースが多く見られます。
この記事では最近の株価下落局面での「つみたてNISA」の対象としなっているバランスファンドの値動きと、他の対象ファンドの値動きを比較しながら分析し、バランスファンドの有効性や「つみたてNISA」で選ぶべきバランスファンドについて解説しています。
バランスファンドの値動きの比較
株式、債券、不動産、コモディティーなどといった複数の資産クラスにバランスよく分散投資するというのがバランスファンドのイメージだと思いますが、何を基準にして「バランス」を決めるのかによってバランスファンドの性格や値動きは全く異なります。バランスファンドについては以下の記事でくわしく説明していますので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。
各種バランスファンドの最近の値動きをまとめてみたのが以下の表です。「つみたてNISA」のスタートに合わせて設定されたファンドが多いこともあり、今回は2017年10月31日を基準日としてデータを揃えています。
基準日からスタートし、多くのファンドが高値をつけた2018年1月23日の価格を「最高値」、多くのファンドが年初来の安値をつけている2018年3月5日を「最安値」としています。
各ファンドにおける、スタート時点から最高値(1月23日)までの「上昇率」、最高値から最安値(3月5日)までの「下落率」、スタート時点(2017年10月31日)から最安値(3月5日)までの「最終変動率」を見て行くことにしましょう。
2017年10月31日 | 2018年1月23日 | 2018年3月5日 | - | - | - | |
---|---|---|---|---|---|---|
つみたてNISAの対象ファンド | 基準日 | 最高値 | 最安値 | 上昇率 | 下落率 | 最終変動率 |
ダイワ・ライフ・バランス30 | 15,918 | 16,322 | 15,681 | 2.54% | -4.09% | -1.49% |
ニッセイ・インデックスバランスF(4資産均等) | 11,293 | 11,710 | 10,963 | 3.69% | -6.81% | -2.92% |
ニッセイ・インデックスバランスF(6資産均等) | 10,058 | 10,459 | 9,712 | 3.99% | -7.69% | -3.44% |
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) | 10,491 | 10,992 | 10,214 | 4.78% | -7.62% | -2.64% |
ニッセイ TOPIXインデックスF | 11,407 | 12,355 | 10,961 | 8.31% | -12.72% | -3.91% |
楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 10,137 | 10,911 | 9,794 | 7.64% | -11.40% | -3.38% |
楽天・全米株式インデックス・ファンド | 10,176 | 10,992 | 9,959 | 8.02% | -10.37% | -2.13% |
ひふみプラス | 38,895 | 44,454 | 39,937 | 14.29% | -11.31% | 2.68% |
下げ相場に強いというのは過去の話
最初に注目して頂きたいのが「最終変動率」です。最終変動率は2017年10月31日からの2018年3月5日までの約4ヶ月間での価格変動率です。
バランスファンドでは株式の値動きとは異なる値動きをする資産クラスに分散して投資することで、株式市場が下落した場合のファンド価格の下落を抑制する効果が期待されています。
ところが実際の「最終変動率」を見ると、4資産、6資産に分散して投資しているバランスファンドが、米国の株式に100%投資している「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、国内の株式に100%投資しているアクティブ運用の「ひふみプラス」よりも値下り率が大きくなっていることが分かります。
実は現在のマーケットでは長く続いた世界的な低金利のせいで、株価下落時に期待される債券価格の上昇が起こりにくく、どちらかと言えば同じように下落してしまう傾向が強くなっています。
これは、デリバティブ市場の発達により、株価の下落に対しては債券を買うのではなく、株式の先物取引やオプション取引でヘッジを行う方が効率的になっており、株価の下落局面で債券を買う動きが弱くなってきているためです。
従って、株と債券に半分ずつ投資するという4資産型、6資産型のような古典的なバランスファンドは昔と比べて機能しにくくなっているのです。このようなバランスファンドは上昇率が低い分だけ下落率も低いだけであり、単純に資金効率が低いだけのファンドとなっています。
選ぶべきバランスファンドとその役割
バランスファンドの中では最もリスク資産に対して積極的に投資するが8資産型です。新興国への投資比率が25%となっているだけではなく、不動産にも25%を投資します。
日本の株式市場の動きに連動する「ニッセイ TOPIXインデックスファンド」と比較すると「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」は上昇率も下落率も小さいですが、4資産型や6資産型に比べると下落率に大きな差がない割には上昇率が高いため、最終変動率もマイナス幅が小さくなっています。
新興国や不動産に強気の見通しをお持ちの方は「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」を選ぶといいでしょう。
最もディフェンシブな動きをしているのは「ダイワ・ライフ・バランス30」です。上昇率も下落率も非常に小さいのは日本の債券に55%、先進国の債券に15%を投資するという債券中心のファンドだからです。
ただし、このファンドだけで運用しても大きなリターンは期待できません。「ダイワ・ライフ・バランス30」は「楽天・全米株式インデックス・ファンド」のような上昇率も下落率も高いが大きなリターンが期待できるファンドと組合せて運用するのが理想です。
日本株ならインデックスよりひふみプラス
当ブログでは「つみたてNISA」で日本株を中心に投資することについては否定的な立場をとっています。日本株が悪いと言っているのではなく、長期投資では国際分散投資が基本だからです。
世界の株式市場は長期的に見れば右肩上がりの成長を継続していますが、日本の株式市場だけが過去の高値を下回った状況から抜け出せておらず、先進国で唯一右肩上がりの成長ができていないマーケットであるという点も気になるポイントです。
皆さんの大切な資金をそのようなマーケットに集中的に投資するのではなく、世界中のマーケットに分散して投資する方が好ましいというのが当ブログの考えです。
そのような日本の株式市場ですが、あえて投資するならインデックスファンドではなく、アクティブ運用の「ひふみプラス」に投資するという戦略は面白いかも知れません。
日本の株式市場のベンチマークとなるTOPIXに連動する「ニッセイ TOPIXインデックスファンド」の上昇率が8.31%ですが、「ひふみプラス」の上昇率は14.29%となっており、最終変動率は今回調査したファンドの中では唯一プラスとなっています。
ポートフォリオの1割程度までなら日本の株式市場への投資は問題ないと思いますので、どうせ投資するならインデックスファンド以外にも、「ひふみプラス」という選択肢もあるような気がします。「ひふみプラス」については以下の記事でまとめてありますのでご興味のある方は是非ご覧下さい。
まとめ
古典的なバランスファンドは期待する値動きをしなくなってきています。
リスクをとりたくないという理由でバランスファンドを選ぶなら「ダイワ・ライフ・バランス30」を選ぶといいでしょう。ただし、大きなリターンは期待できませんので、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」などを少しだけポートフォリオに追加してみてもいいと思います。
多少のリスクは承知の上で安定的な運用を目指したいという方は「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」のような8資産型も悪くはありませんが、新興国と不動産への投資比率が高いということは事前に理解しておきましょう。
「つみたてNISA」では日本の株式市場への投資だけでなく、国際分散投資を行うほうが結果的にはリスクは小さくなるものと考えられます。どうしても日本へのこだわりがあるという方は「ひふみプラス」などもポートフォリオに加えてみてはいかがでしょう。
※追記(2018年7月22日)
世界の株式市場と債券市場に最適なバランスで投資する「楽天・インデックス・バランス・ファンド」が発売されました。
株式比率が30%の「債券重視型」、50%の「均等型」、70%の「株式重視型」の3つから選ぶことができ、信託報酬も「均等型」で0.2546%と割安な水準となっています。
「8資産均等型」のバランスファンドは「新興国」「REIT」「日本市場」への投資バランスに偏りがありますが、「楽天・インデックス・バランス・ファンド」は世界経済との連動を目的とした投資バランスとなっており、初心者の方が利用するのに最適です。