この記事では業界最低水準の運用コストをめざす「eMAXIS Slimシリーズ」と、そのライバルである「ニッセイインデックスファンド」を比較し、長期運用を前提とした「つみたてNISA」や「iDeCo」において、どちらの投資信託を選ぶべきかについて解説しています。
INDEX
リターンの優劣はコストで決まる
インデックスファンドを利用して積立投資を行う場合、リターンに最も大きな影響を与えるのは「信託報酬」に代表される運用コストです。
もちろんインデックスファンドを選ぶ際には「信託報酬」以外のコストや、「純資産額」、「運用期間」、「トラッキングエラー」などについてもチェックしておく必要があり、単純に「信託報酬」だけを比較してファンドの優劣を語ることは正しいことだとは言えません。
ただし、今回の記事で比較していく「ニッセイインデックスファンド」と「eMAXIS Slimシリーズ」につきましては十分な運用実績を持つマザーファンドに投資する仕組みとなっている上、どちらも人気のある投資信託ですので純資産額も十分にあり、差別化要因は「信託報酬」に限定されています。
過去4回も信託報酬を引き下げたニッセイ
ニッセイアセットマネジメント株式会社が運用する「ニッセイインデックスファンド」シリーズは2018年5月末時点で12本のファンドがラインナップされており、シリーズ合計の純資産総額は1400億円を上回る人気商品となっています。
SBI証券、楽天証券、マネックス証券が集計している「つみたてNISA」の投資信託ランキングにおいても、「ニッセイインデックスファンド」は常にTOP10にランクインし、その人気の高さを証明しています。
「ニッセイインデックスファンド」の最大の魅力は、「規模のメリットを顧客に還元する」という姿勢にあり、顧客の支持に応えるかたちでこれまで4回の信託報酬率の引下げを実施しています。
今後も運用する純資産総額の増加に合わせて信託報酬の引き下げが行われる可能性があり、安心して保有し続けることができる投資信託のひとつであることは間違いありません。
最低水準の運用コストを維持するeMAXIS Slim
三菱UFJ国際投信株式会社が運用する「eMAXIS Slimシリーズ」はネット販売に限定された低コストのインデックスファンドという位置づけの商品です。
「eMAXIS Slimシリーズ」の最大の魅力は「業界最低水準の運用コストをめざす」という姿勢を明言し、なおかつそれを実行している点にあります。
インデックス投資家は「eMAXIS Slimシリーズ」を選んでおくことで、常に業界最低水準の運用コストで資産を運用することができますので、今後もしも「eMAXIS Slimシリーズ」よりも低コストなインデックスファンドが発売されたとしてもあわてて乗り換える必要はありません。
2018年6月29日に「ニッセイインデックスファンド」は6本のインデックスファンドについて信託報酬の引き下げを発表し、そのうち3本のインデックスファンドは「eMAXIS Slimシリーズ」の類似ファンドよりも低い信託報酬になることが話題となりました。
しかし、ニッセイの発表から2営業日後の2018年7月3日、三菱UFJ国際投信から「eMAXIS Slimシリーズ」3本(ニッセイの類似ファンドよりも高い信託報酬になる予定となっていた「先進国株式インデックス」、「バランス(8資産均等型)」、 「新興国株式インデックス」の3本)について信託報酬を引き下げるとの発表があり、「他社類似ファンドの運用コスト注意を払い、業界最低水準の運用コストをめざします。」という公約が速やかに実行されました。
このようなことから「eMAXIS Slimシリーズ」はインデックス投資家から絶大な支持を得ており、「つみたてNISA」の投資信託ランキングにおいても常にTOP10にランクインしているだけでなく、「投信ブロガーが選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー2017」でも2本の「eMAXIS Slimシリーズ」がTOP10にランクインしています。
つみたてNISAではeMAXIS Slimを選ぶ
「つみたてNISA」でインデックスファンドを選ぶ場合は「ニッセイインデックスファンド」よりも「eMAXIS Slimシリーズ」を選んでおく方がいいでしょう。
「つみたてNISA」は年間最大40万円という購入枠の上限に投資信託の乗り換え購入額が含まれてしまうというルール上の問題があるため、一度選択した投資信託から簡単に別の投資信託に乗り換えること(スイッチング)ができません。
従って、「つみたてNISA」においては「他社類似ファンドの運用コスト注意を払い、業界最低水準の運用コストをめざします。」と明言している「eMAXIS Slimシリーズ」を選んでおけば、常に最低水準のコストで運用することができ、他の類似ファンドに乗り換える必要がありません。
iDeCoでは利用する金融機関に注意する
「つみたてNISA」とは異なり、「iDeCo」の場合は好きなタイミングで自由に運用商品を乗り換えること(スイッチング)が可能です。
ただし、「iDeCo」の場合は金融機関によって取り扱っているインデックスファンドの品揃えが大きく異なる点には注意が必要です。
楽天証券やマネックス証券といった大手ネット証券では「つみたてNISA」で利用できる投資信託の数は120本以上もあり、「ニッセイインデックスファンド」も「eMAXIS Slimシリーズ」も自由に選択すること可能です。
それに対して「iDeCo」では大手ネット証券であっても最大35本の運用商品しか取り揃えることができないルールとなっており、「ニッセイインデックスファンド」や「eMAXIS Slimシリーズ」の取り扱いがない金融機関もたくさんあります。
また、「ニッセイインデックスファンド」につきましては、「iDeCo」ではDC専用のインデックスファンド(ニッセイ-DCシリーズ)となるため、今回の信託報酬引き下げの対象外となっている点にも注意が必要です。
従いまして、少なくとも現時点では「iDeCo」においては「ニッセイ-DCシリーズ」よりも「eMAXIS Slimシリーズ」を選択しておく方が低コストでの運用が可能となっています。
「iDeCo」の運用商品が豊富で「eMAXIS Slimシリーズ」を利用できるのは、大手ネット証券ではマネックス証券だけとなっていますので、これから「iDeCo」を始める方はマネックス証券の利用を検討されることをおすすめします。
「iDeCo」で選ぶべき金融機関につきましては以下の記事で詳しく解説しています。