三菱UFJ国際投信の信託報酬42%引下げに見る業界最安コストへのこだわり

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2018年の画像

投資信託の運用会社にとって唯一の収入源である信託報酬を4割以上も引き下げることは簡単なことではありませんが、2018年1月30日から「eMSXIS Slim 先進国株式インデックス」の信託報酬が現行の0.1890%から0.1095%へ引き下げられることが、このファンドの運用会社である三菱UFJ国際投信から発表されました。

業界最安宣言の有言実行

以前から三菱UFJ国際投信は「eMSXIS Slim」シリーズについて「他社類似 ファンドの運用コストに注意を払い、業界最低水準の運用コストをめざします」と宣言していました。恐らく今回の大幅引き下げは、SIBアセットマネジメントが新たに運用を開始する「EXE-iつみたて先進国株式ファンド」の実質コストが0.11%強になることを受けたものであると想像できます。

「eMSXIS Slim 先進国株式インデックス」は日本を除く世界主要国の株式に投資し、「MSCIコクサイ インデックス」というメジャーな指数をベンチマークにした投資信託ですが、今回行った信託報酬の大幅引き下げにより、「MSCIコクサイ インデックス」をベンチマークとするインデックスファンドの中では最安のコストとなりました。

この投資信託は「つみたてNISA」の対象であるだけでなく、マネックス証券では「iDeCo」でも利用できることから、個人投資家が先進国の株式に最安のコストで投資するための最強の選択肢のひとつになりました。

薄利多売で利益が出るならOKだが

先進国株式に投資する投資信託では平均的な信託報酬が0.5%程度、最近の最安値ラインは0.2%前後となっていたことから考えると、「eMSXIS Slim 先進国株式インデックス」の信託報酬0.1095%が、いかに低い信託報酬であるかはご理解頂けると思います。そもそも国内株式に投資するよりも海外の株式に投資する方がコストは高くなるのが一般的なのですが、今回の引き下げにより、内外のコストが逆転してしまうという不自然な現象が発生してしまいました。

「eMSXIS Slim 先進国株式インデックス」は今月からスタートした「つみたてNISA」の対象となっており、先進国の株式に投資する投資信託を選ぶ最の最有力候補になることは間違いありません。同じものをベンチマークとしているインデックスファンドを選択する場合に最も重視される基準となるのは信託報酬であり、インデックスファンドではそれ以外の差別化要因がないからです。

「eMSXIS Slim 先進国株式インデックス」の現時点での純資産は30億円程度ですが、「つみたてNISA」で人気化すれば純資産が小さいことによる繰上償還リスクについてはさほど考慮しなくても良さそうです。また、新興国市場の株式に投資する投資信託とは異なり、信託報酬以外の見えないコスト(株式の売買手数料や有価証券の保管料など)が極端に大きくなることも考えにくいでしょう。

唯一の不安材料としては、「こんなに低い信託報酬で三菱UFJ国際投信に利益は出るのか」という疑問です。どのようなビジネスにおいても売り手と買い手の双方にメリットがなければ継続することは困難です。信託報酬が引き下がることは大歓迎なのですが、「つみたてNISA」のような20年間という長期投資においては継続性が担保されていることが投資対象としての最低条件となります。

「つみたてNISA」での利用方法

「eMSXIS Slim」シリーズは日本を代表する運用会社のひとつである「三菱UFJ国際投信」の看板商品であり、今回の信託報酬の大幅引き下げは「三菱UFJ国際投信」の「eMSXIS Slim」シリーズに対する本気度のあらわれだとすれば、「他社類似 ファンドの運用コストに注意を払い、業界最低水準の運用コストをめざします」という意気込みにこたえてあげたくなるという方も多いのではないでしょうか。

幸いにも「eMSXIS Slim 先進国株式インデックス」は「MSCIコクサイ インデックス」をベンチマークとしているため、非常に使い勝手が良く、日本の株式市場を投資対象にしていないことから国内株式に投資する投資信託との相性が抜群です。

例えば、「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」や「eMAXIS Slim 国内株式インデックス 」などの低コストな国内株式(TOPIXをベンチマークとする)に投資する投資信託を1割前後の割合で組み合わせることで、国内外にバランス良く投資することができます。

インデックスファンドだけでは夢がないと言う方はアクディブ運用で人気を独占している「ひふみプラス」を組合せてもいいでしょう。インデックスファンドだけの組合せで大きなリターンを狙うのであれば、米国の株式市場への投資比率を引き上げるために「楽天・全米株式インデックス・ファンド」と組み合わせてみてはいかがでしょう。

売り手にも買い手にもメリットあり

「つみたてNISA」については金融庁が主導した方向性について賛否両論がありますが、少なくとも投資信託のコストについては引き下がる方向に作用したことは事実であり、このこと自体は個人投資家にとって非常にありがたいことだと言えます。

ただ、30年も金融業界にいると、金融機関の裏側のメリットも見えてしまいます。信託報酬の引き下げによって収益を犠牲にしながらも、系列金融機関以外での投資信託の取り扱いが増えることは、「フィデューシャリー・デューティー」を提唱する金融庁への大きなアピールとなりえます。

このような意味からすると信託報酬の引き下げは個人投資家にも金融機関にもメリットがあると言えるのかも知れません。