一部の新聞報道によると、金融庁が国内FX取引における最大レバレッジ(取引倍率の上限)を現行の25倍から10倍程度に引き下げる検討に入っているということです。
そもそも国内のFX取引はレバレッジ400倍という非常識な取引倍率がまかり通っていた時代もあり、見かねた金融庁が2010年にレバレッジ上限を50倍に、2011年にレバレッジ上限を25倍に引き下げてきた歴史があります。
そして今回、金融庁は早ければ2018年度中にもレバレッジ上限を10倍程度まで引き下げることを検討しているということですが、このレバレッジ規制がFX業界にもたらす影響について考えてみたいと思います。
2017年11月7日追記
2018年5月31日追記
FX会社の株価は軒並み下落
2017年9月28日、FX取引におけるレバレッジ上限を10に引き下げることを金融庁が検討しているという内容が一部の報道機関から出された当日、FX取引を企業収益の柱としているヒロセ通商、マネーパートナーズグループ、GMOクリックホールディングスの株は終日売り物に押されて軒並み値を下げました。
「レバレッジが低くなる→売買高が減少する→FX会社の収益が悪化する」という連想で株を売ったのでしょうが、過去のFX会社の収益とレバレッジの関係を検証すれば、現時点で考えられるシナリオとして大きく間違ってはいないのかも知れません。
ただ、既存のお客様がどの程度のレバレッジで取引しているのかというと、中長期的に建玉を維持してスワップポイントによる収益を狙っているお客様のレバレッジは概ね10倍未満のレバレッジ、恐らく3倍~5倍くらいのレバレッジに収まる層が最も多いのではないかと想います。
従って、FX会社のお客様のオーバーナイトの建玉については今回のレバレッジ上限引下げが実施されたとしても大きな影響は受けないものと考えられます。
収益の柱であるデイトレードに悪影響が
現在のFX業界ではデイトレードが全取引の80%前後を占めているものと考えられます。建玉を翌日以降に持ち越す取引をする人はそれなりに余裕を持った資金を口座に入金して取引をしていますが、デイトレーダーは口座の資金を最大限有効に利用して取引する傾向があります。
もちろんデイトレーダーと言えども25倍のフルレバレッジで取引している人は少数派ですが、10倍をやや上回るレバレッジで取引をしているデイトレーダーによる売買はFX会社の売買高においてかなりのシェアを持っているはずです。
例えば、12倍で取引している人の場合、現在は上限25倍に対して半分程度のレバレッジにおさえて余裕をもって取引している訳ですが、上限が10倍になった場合は6倍くらいまでレバレッジを下げて取引しないと現在と同じ取引スタイルを維持できなくなります。
つまり、現在25倍近くのレバレッジで取引している人も、10倍前後で取引している人も、上限が10倍になれば、取引する数量を半分くらいに減らしてくる可能性があるということです。
単純に計算すると、現在のFX会社の売買高が3割~4割程度減少する可能性があるということになります。
国内FX会社の統廃合と顧客の海外流出
売買高が3割も減少すると黒字を維持できないFX会社が出てくるはずです。小さなFX会社は大手に身売りするところも出てくるでしょう。
また、個人投資家は国内のレバレッジ規制から逃れるため、海外のFX会社を利用する人も増えることが予想されます。海外のFX会社であれば今でも888倍~100倍程度のレバレッジで取引できますし、驚くことに日本語に対応しているFX業者もけっこうあります。
そもそも、FX会社自身がレバレッジ規制から逃れるために規制のない国へ逃避しているケースも多く、日本のFX会社も海外で活路を見出している会社がいくつかあります。
ただし、たとえ規制のない第三国に逃れたFX会社であっても、日本の投資家に向けた営業活動は禁止されており、業者の倒産リスクなどを考慮すると安易に海外のFX会社で取引すべきではありません。
私が申し上げたいことは、本当に投資家の保護を考えるのであれば、行き過ぎた規制の副作用として個人投資家が海外の悪質FX会社の餌食にならない方策も同時に実施してもらいたいということです。
今回の規制強化は誰が得をする規制なのか私には分かりません。まだ検討段階ということですのでFX会社の業界団体である金融先物取引業協会の頑張りに期待したいところです。
FX業界はこれまでも金融庁による度重なる規制を乗り越えながらも顧客数および売買高を伸ばしてきた実績があり、今回の規制についてもしっかりと対応し、更なる発展を遂げていくものと考えています。