改正DC法で「iDeCo」の運用商品数は35本以下に|SBI証券利用者が気をつけるべきポイント

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浜辺の老人

2018年5月から「確定拠出年金制度等の一部を改正する法律」が施行されます。今回の法改正ではDCだけではなく、「iDeCo」で利用できる運用商品数の上限が35本となり、60本を超える運用商品数を誇るSBI証券の利用者に影響が出てくる可能性があります。

また、「iDeCo」で運用する商品を自分で決められない利用者は自動的に元本確保型の保険商品や定期預金で運用することになる現状を憂慮し、改正DC法では、各金融機関が独自に選んだ投資信託などのリスク商品を初期設定として提供することができるように「指定運用方法」の規定が整備されました。

この記事では、改正DC法の施行によって注意すべきポイントを整理し、既に運用商品数の上限を大きく上回っているSBI証券を利用する際の注意点などについて解説しています。

「iDeCo」の65%が定期預金で運用中

退職金や国民年金、厚生年金などだけで老後の生活資金が確保できた時代は終わり、公的年金だけでは不足する老後資金については国民が自己責任で対応しなければならくなった現在、「iDeCo」を利用した老後資金の形成は全ての国民が利用すべき最も有効な資産運用手段のひとつとなっています。

「iDeCo」とは60歳未満の厚生年金・国民年金加入者であれば誰でも加入することができる個人年金制度であり、米国の確定拠出年金(401K)をお手本として2001年に日本でも導入され、2017年からは全ての国民が利用できるようになりました。

少額の資金をコツコツと積立てながら運用していくことで、60歳までに大きな金融資産(老後資金)をつくることが「iDeCo」の目的です。厚生労働省は自助努力によって老後資金を形成する国民へのインセンティブとして、「iDeCo」で積立てた資金の全額を所得から控除することにより、所得税と住民税に一部を毎年キャッシュバックし、運用益に対する税金を免除してくれます。

例えば、企業年金のない会社に勤務する年収350万円の会社員が毎月2万3000円を「iDeCo」で積立てた場合、毎年4万円程度の税金が年末調整でキャッシュバックされる計算となりますので、安定した収入がある人であれば「iDeCo」への加入を検討するメリットは大きいと言えます。

ただし、「iDeCo」の目的は老後資金の形成であり、運用によって資産を増やさなければ「iDeCo」を利用する意味がありません。

例えば、30歳から「iDeCo」を利用して毎月2万3000円の資金を積立てながら年率5%で運用できた場合、60歳での受け取り金額は積立元本が828万円、運用益が1086万円、30年間の節税額が124万円となり、合計で2000万円以上の老後資金を準備することが可能です。

定期預金のようにインフレに弱い運用商品を利用した場合は実質的にはマイナス運用となってしまうことは明白なのですが、現実には「iDeCo」による運用金額の65%の資金が元本確保型の保険や定期預金で運用されており、厚生労働省は強い危機感を持っています。

デフォルトを定期預金から投資信託に

「iDeCo」ではこれまで利用者が運用商品を決めない場合、自動的に元本確保型の保険商品や定期預金での運用を行うことなっていましたが、「確定拠出年金制度等の一部を改正する法律」が施行される2018年5月以降は投資信託による運用をデフォルトの設定とする金融機関が増えていくものと考えられます。

既にりそなグループ各行は「指定運用方法」を定期預金から「ターゲットイヤー型」の投資信託に変更することを発表しており、野村證券、楽天証券、マネックス証券、SBI証券などもこの流れに続くものと思われます。

米国でも以前は元本確保型の運用商品をデフォルトにするケースが多かったのですが、2007年に確定拠出年金(401K)のデフォルト(初期設定)をターゲットイヤー型の投資信託に誘導しやすいルールを導入したことにより、現在では401Kの残高のうち7割近くが投資信託や株式などでの運用となっています。

「現状維持バイアス」が機能する「iDeCo」

行動経済学や行動ファイナンスと呼ばれる学問では「現状維持バイアス」の研究が進んでいます。人は変化よりも現状維持を無意識のうちに選択する傾向があり、環境を変えれば得をすることがわかっていたとしても、現在の環境が変化することに不安や違和感を持ち、結果的には現状を維持する傾向があるということが分かってきています。

金利がほぼゼロに近い定期預金で運用すれば、「iDeCo」の口座管理手数料やインフレ率を考慮すればマイナス運用になることは確実であり、国際分散投資による長期積立投資の方が遥かに高いリターンが期待できることを理解していたとしても、「iDeCo」の運用商品のデフォルトが定期預金となっていると、現状の運用状況を積極的に変更しないというのが「現状維持バイアス」の働きです。

この働きを逆手にとり、デフォルトの運用商品を投資信託に変更することで、元本確保型が中心となっている「iDeCo」の運用状況を投資信託中心へと移行させようというのが厚生労働省の狙いです。個人金融資産の7割が投資信託で運用されている米国と6割以上が預貯金で運用されている日本を比較した個人金融資産の増加率の差については以下の記事でくわしく解説しています。

米国では普通の会社員でも退職後の個人金融資産が1億円を上回るケースは珍しくありません。過去20年間で家計金融資産は米国が3.3倍、英国で2.5倍に増加しているのに日本では1.5倍にしか増えていません。このような差はいったいどこから生まれてくるのでしょうか。

デフォルトの運用商品が適用される条件

最初に確認しておきたいのが、「iDeCo」の運用商品として定期預金を選んでいる人(あるいはこれから定期預金を選ぶ人)が強制的に投資信託への運用に切り替えられるようなことはないということです。

デフォルトの運用商品が適用されるのは2018年5月以降の加入者が3ヶ月以上の期間において運用先を自ら選択しなかった人が、2週間の猶予期間のうちに運用商品を選択しなかった場合です。この場合は、自らデフォルトの運用商品を選択したと判断されますので、運用の結果は自己責任となり、デフォルトの運用商品を設定した金融機関には何の責任もありません。

もちろん「iDeCo」ではいつでも運用商品を変更することができますし、運用商品の乗り換え(スイッチング)も自由に行うことができますので、まだ運用商品を選択されていない方は、これを機会に運用商品を選択しておきましょう。「iDeCo」で選ぶべき投資信託については以下の記事で詳しく解説しています。

iDeCoのメリットは知っていても、これまで投資をしたことがない初心者の方の中には、何にどれくらい投資したらいいのか分からないという方が多いのではないでしょうか。そこで、この記事では投資未経験者がiDeCoを始める際に選ぶべきおすすめの投資信託やその組み合わせ方法などについて解説していきます。

運用商品数の上限35本を超えているSBI証券

改正DC法では金融機関が「iDeCo」で採用する金融商品の上限を35本までとしており、現時点で67本の運用商品を提供しているSBI証券では今後5年間で30本前後の投資信託を対象商品から削減しなければなりません(SBI証券の「iDeCo」にはターゲットイヤー型の投資信託が4本ありますが、これらはまとめて1本とカウントされます)。

SBI証券の今後のアクションとしては、同じ指数に連動するインデックスファンドが複数ある場合については信託報酬の高いものから排除していくことが顧客の利益につながるものと思われますが、自社の利益を追求するならば信託報酬の高いものを残しておくことなります。

また、純資産額が少なかったりの純資産額に減少傾向が見られる投資信託については削除される可能性があると思われますが、自社系列の運用会社が運用しているものについては積極的に削減してこないことも考えられます。

SBI証券としては、新たに魅力的な投資信託が今後も発売される可能性についても考慮しなければなりませんので、現状を30本程度にまで削減し、新規採用枠を確保しておく必要についても考慮してくる可能性があります。

SBI証券が運用商品を削除するには、削除対象となっている運用商品で「iDeCo」を運用している人のうち、3分の2以上の人から同意を得る必要があります。従って、人気のある投資信託を削除することは困難であるため、人気のない運用商品から削除されていくことが予想されます。

元々SBI証券の「iDeCo」には魅力的な投資信託が少ないので、運用商品を削減するだけではなく、これを機会に「eMAXIS Slimシリーズ」や「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」などを新たに加えてくれるとSBI証券の「iDeCo」を利用するメリットが出てくるのではないかと思います。

ただし、SBI証券の「iDeCo」は受け取り方法に柔軟性がないため、思わぬ税負担が発生する可能性もありますので、この点についても改善してもらえるといいのではないかと思います。「iDeCo」受取時の税金については以下の記事で詳しく解説しています。

「iDeCo」は受け取る時に課税される仕組みであることをご存知ですか。ただし、「iDeCo」の受け取り方法を工夫することで場合によっては税金がゼロにしたり、大幅に税金を減らすことが可能です。この記事では「iDeCo」の受取時の節税方法について解説しています。

まとめ

「iDeCo」ではスイッチングが自由に行なえますので、「iDeCo」で利用している運用商品が対象商品から外されたとしても類似する他の投資信託へ乗り換えることが可能です。

改正DC法によってSBI証券の「iDeCo」を利用している人の中にはスイッチングを行う必要が出てくる可能性もありますが、とりあえずはSBI証券から正式なアナウンスがあるまでは慌てる必要はありません。

また、後日発表されるであろうSBI証券の新たな商品ラインナップに満足できない場合は、他の金融機関に乗り換えることも可能です。「iDeCo」の金融機関の選び方については以下の記事で詳しく解説しています。

この記事では「iDeCo」の運用方法がわからないという20代から30代の人に向けて、利用すべき証券会社と投資信託をセットにしてご紹介し、「iDeCo」の金融機関と選ぶべき投資信託がひと目で分かるように解説しています。
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