プロが教える「iDeCo」と「つみたてNISA」を組み合わせた老後資金のつくり方

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2018年1月4日から「つみたてNISA」がスタートしました。これまでは老後資金の積立方法としては「iDeCo」を選択するのが節税効果の面から考えると唯一の選択肢でしたが、これからは「つみたてNISA」も新たな選択肢として加わりました。

この記事では「iDeCo」と「つみたてNISA」のどちかを選ぶだけではなく、状況に合わせて上手に組み合わせて利用することで計画的に老後資金を積み立てていく方法について解説していきます。

この記事は2018年4月15日にアップデートを行いました。

老後資金としていくら準備するべきか

様々なメディアでいろいろな立場の人が老後に必要な資金額について意見を述べています。「豊かな老後に必要なお金は最低でも1億円は必要です」というような意見もあれば、「老後に必要な資金は1600万円程度で十分なので、あまり神経質になる必要はない」というような意見もあり、実際のところ「いくら準備していいのか分からない」という人も多いのではないかと思います。

このように老後に必要な資金額が人によってバラバラな理由はイメージしている老後の生活レベルが人によって異なるからです。現役世代においても毎月100万円の生活費で暮らしている人もいれば、20万円で生活している人もいる訳ですから、老後に必要な資金の標準的な金額というのは実は存在しないというのが正解だと言えます。そこでこの記事では老後資金を「老後に最低限必要な資金」と定義した上で、まずはその金額を計算してみたいと思います。

公益財団法人「生命保険文化センター」が行った「生活保障に関する調査(平成28年12月発行)」によると、夫婦二人の老後の最低日常生活費(月間)の平均値は22万円となっています。ちなみに、ゆとりある老後生活費(月間)の平均は34万9000円という調査結果でした。

また、厚生労働省の「国民生活基礎調査(平成28年)」によると高齢者世帯の公的年金所得は年間201万6000円となっています。寿命を90歳として考えると60歳から30年間の最低日常生活費は22万円×12ヶ月×30年=7920万円ですが、65歳から受給する公的年金の90歳までの総受給額は201万6000円×25年=5040万円となりますので、老後資金として準備すべき最低額は2880万円となります。

老後資金として最低でも必要な資金は2880万円という計算結果となりましたが、この資金を20代、30代からの積立運用で準備していくための手段として、非課税制度である「iDeCo」や「つみたてNISA」の利用は最適な選択肢だと言えます。

iDeCoのメリットは最強の節税効果

まずは「iDeCo」について簡単に説明しておきます。「iDeCo」とは個人型確定拠出年金の愛称で国民年金や厚生年金だけでは老後の資金が不安だという人のための私的年金制度の一種です。毎月あるいは毎年自分で決めた金額を積み立てて、その運用方法まで自分で決めることができのが特徴です。

毎月の積立額は5000円からとなっており、1000円単位で増やすことが可能です。一度決めた積立額は毎年3月から4月の1回のみ変更が可能ですが、あくまで年金ですので60歳までの途中換金はできませんまた、積立額の上限が職業や会社の年金制度によって決まっています。

厚生労働省が主導してつくった年金制度ですので個人年金保険などと異なり、公的年金控除や退職所得控除の対象となります。また、個人年金保険では掛け金に対する所得控除に上限があるのに対し、「iDeCo」は積立金の全額が所得控除の対象となる点が最大のメリットです。

例えば、年収500万円配偶者と子どもがいる企業年金のないサラリーマンをモデルケースで計算すると毎月の積立額を上限の2万3000円とした場合、諸経費などを考慮したとしても年間で5万円以上の節税効果があります。ご参考までに年間の節税効果の概算を下記の表にまとめてみました。自営業の方は月額6万8000円まで積立てが可能ですので一番左の列の3倍が目安になります。

 会社員(企業年金なし)・専業主婦会社員(企業型確定拠出年金のみ)公務員・会社員(企業年金あり)
月間積立上限額2万3,000円2万円1万2,000円
年収節税額節税額節税額
200万円~500万円未満4万1,000円3万6,000円2万1,600円
500万円~650万円未満5万5,000円4万8,000円2万8,800円
650万円~1100万円未満8万2,000円7万2,000円4万3,200円
1100万円~1300万円未満9万1,000円7万9,200円4万7,520円

年間27万6,000円の積立に対して毎年5万円以上の税金を払わずに手元に残せる訳ですから、30歳からスタートした場合、節税効果だけでも60歳までの30年間で150万円のお金を手元に残せる計算です。iDeCoの運用対象には定期預金もありますので、元本828万円(27.6万円☓30年)を確保しながら150万円の節税効果を手にすることも可能です。

ただし、最短でも60歳までは換金ができないうえに、最低でも毎年2004円、口座管理手数料の高い金融機関だとさらに年間5400円のコストが60歳まで毎年発生する点に注意が必要です。「iDeCo」を利用する際には、最安の手数料で豊富な運用商品を揃えているマネックス証券や楽天証券などの大手ネット専業証券を利用するのがよいでしょう。詳しくは以下の記事でまとめてあります。

iDeCoの節税効果は分かったけど、どの証券会社でどうやって運用すればいいのかが良く分からない。こんな理由でiDeCoを利用せずに年間何万円も税金を多く支払っているなんてもったいなですよ。この記事はそんなあなたの疑問を解消する大きな手助けになるはずです。

つみたてNISAのメリットは換金性

「つみたてNISA」は年間40万円まで(月間3万3000円までの積立投資)の範囲であれば、金融庁が厳選した低コストの投資信託に対する積立投資で発生した利益を20年間非課税とする制度です。「iDeCo」のように口座維持に手数料が発生することはありません。

「iDeCo」が厚生労働省の管轄する年金制度であるのに対し、「つみたてNISA」は金融庁の管轄する投資制度です。金融庁が掲げる「貯蓄から投資へ」というスローガンを実現していくための切り札が「つみたてNISA」ですので「iDeCo」と違って元本保証されている定期預金で運用することはできず、金融庁が厳選した144本の投資信託と3本のETFが投資対象となります(2018年4月13日時点)。

コストの低い優良な投資信託を長期間積み立てていくことにより、若年層が長期に渡って金融資産を形成していくというのが金融庁の考えるシナリオです。

従って、節税効果は投資信託の積み立てで発生する利益に対する20.315%の税金がゼロになるというもので、積立額そのものが所得控除される「iDeCo」とは節税効果に差があります。

その代わり、「つみたてNISA」は途中換金が可能であり60歳まで換金できない「iDeCo」よりも流動性の面では優れています。つみたてNISAについての詳しい解説は以下の記事でまとめてあります。

20代から30代の方が始める資産運用としてはなかなか良くできているこの「つみたてNISA」。この非課税制度を使わないのはもったいないです。この記事では投資経験のない20代、30代の方が「つみたてNISA」を簡単に理解して賢く利用できるようにまとめてみました。

iDeCoとつみたてNISAの使い分け

iDeCoの利用は収入が安定してから

「iDeCo」を利用するための条件として、まず最初に「60歳まである程度は安定的な収入があって積立を続けられる見込みがあること」があげられます。一度始めたら途中で積立を中止することはできても年間の手数料は60歳まで支払い続けなければならないという点に注意が必要です。

ある程度の安定した収入がなければ節税効果が十分に発揮できないため、収入が安定しないパートやアルバイトで働いている年収200万円以下の主婦やフリーターにはメリットが少ない制度だと言えます。

2017年からiDeCo(イデコ)を利用できる人の範囲が拡大され、専業主婦やパートで働く主婦も利用できるようになりました。世間ではiDeCoのメリットばかりが強調されているようですが、果たして本当にそうなのでしょうか?

もう一つの条件は「これからのライフイベントで必要となる資金の目処が、ある程度ついていること」があげられます。結婚、出産、教育などといったイベントに対して必要となる資金の目処がついていない場合は「iDeCo」で60歳まで拘束される資金を積み立てていくことは困難なケースが多いからです。

以上のように、「iDeCo」の利用は、安定的な収入があり、将来のライフイベントに必要な資金についてはある程度の目処がついている人ということになります。サラリーマンなら20代後半くらいから「iDeCo」の利用を考えていいと思いますが、最初は無理せずに月額1万円くらいからスタートし、余裕が出てきてから積立金額を増額していきましょう。

自営業の方の場合はサラリーマンと違い、不足しがちな年金額を補う意味でもビジネスが順調であれば多少の無理をしてでも「iDeCo」の利用は積極的に考えていくべきです。

つみたてNISAは気軽にスタート

「つみたてNISA」は「iDeCo」と違っていつでも換金できますし、口座管理のコストもゼロですから気軽に利用することが可能です。

ただし、「つみたてNISA」は投資対象がリスク商品であることを考えると教育費の積立などには不向きです。あくまで非課税というメリットを活かした長期積立運用によって金融資産を積み上げていくことが目的であり、使う時期が決まっている資金を運用するには不向きな制度です。

「つみたてNISA」を利用する際に気を付けなければならないのは、金融機関によって取扱っている投資信託が異なるという点です。「つみたてNISA」を利用する金融機関はひとつしか選べませんので、できるだけ低コストな投資信託を豊富に取扱っている金融機関を選ぶようにしましょう。マネックス証券や楽天証券、松井証券などといった大手オンライン証券であれば品揃えも豊富で安心です。

「つみたてNISA」で注意しなければならないことは、20年間という期限のある制度だということです。20年後に株式市場が暴落していた場合、積立てた資金が元本割れするリスクもゼロではありません。このようなリスクを考慮した出口戦略については以下の記事でまとめてあります。

2018年1月から「つみたてNISA」がスタートしました。この記事では「つみたてNISA」の金融機関の選び方や、144本もある投資信託の中から何を基準に投資信託を選び、どのような出口戦略を準備すればいいのかについて解説しています。

非課税の積立投資で目指せる金額

「iDeCo」や「つみたてNISA」のことはご理解頂けたと思いますが、これらの制度を利用することで、「老後に最低限必要な資金」である2880万円の金融資産を形成していくことが可能なのかを検証してみましょう。

20代は社会人になったばかりで収入も多くはないことから老後資金の積立開始を30歳からとし、「iDeCo」と「つみたてNISA」を利用するケースを考えてみたいと思います。

「つみたてNISA」は換金性が高いことから気軽にスタートすることができます。30歳から50歳までの20年間、毎年40万円の積立投資をした場合、積立てることができる元本は800万円となります。「つみたてNISA」の投資対象は投資信託ですが、この時期に投資するなら値動きの大きい株式に投資する投資信託を選ぶのがお勧めです。

世界の株式に投資する投資信託の場合、期待できるリターンは年率で5%~7%程度です。毎年40万円の資金を年率5%で20年間積立てた場合、元本800万円に対して522万円のリターンが期待できますので1322万円の金融資産を「つみたてNISA」で形成することが期待できます。

同様に30歳から毎月2万3000円を「iDeCo」を利用して株式に投資する投資信託に積立投資した場合、60歳までに形成が期待できる金融資産は1833万円プラス節税による150万円ということになります。

このように、年率5%の運用が達成できた場合は「つみたてNISA」と「iDeCo」を最大限活用した運用により、3305万円の老後資金を形成することが可能となり、「老後に最低限必要な資金」である2880万円を上回る資金を準備することが可能となります。

年率5%という数字について懐疑的な見方をする方もいらっしゃると思いますが、過去20年間の米国株式市場(S&P500)の利回りは年率7%を上回っており、株式を中心とした国際分散投資においては、比較的保守的なリターン目標であると言えます。

もちろん過去の実績が将来を保証する訳ではありませんので、もう少し目標リターンを小さくして堅実な運用を目指すという人は、株式だけに投資する投資信託よりも国内外の債券や株式に投資するバランス型の投資信託を選択してもいいでしょう。自身の投資スタイルに合った投資信託を以下の記事を参考に選んでみて下さい。

初めての投資を「つみたてNISA」からスタートするという方も多いと思います。そこで今回は、1本の投資信託だけでバランスよく運用できるオススメの投資信託を投資家のタイプ別にご紹介します。

まとめ

毎年大きな節税効果が見込める「iDeCo」は積極的に利用したいところですが、収入が不安定であったり、ライフイベントに関する資金の目処が全く立っていない方は、「iDeCo」で老後資金の積立を考えるよりも、もう少し近い将来に向けた貯蓄の積み上げを優先し、もし毎月数千円でもリスクがとれる余裕があるなら「iDeCo」よりも流動性の高い「つみたてNISA」の利用からスタートしてみてはいかがでしょう。

ライフイベントに関する資金の目処がある程度ついている方は節税効果の大きい「iDeCo」を利用し、老後資金を積み上げて行きましょう。もし「iDeCo」での年間積立金額の上限を上回る積立が可能であれば、上限を超えた分は「つみたてNISA」を利用しましょう。「iDeCo」で運用すべき投資信託とその組み合わせについては以下の記事でまとめてあります。

iDeCoのメリットは知っていても、これまで投資をしたことがない初心者の方の中には、何にどれくらい投資したらいいのか分からないという方が多いのではないでしょうか。そこで、この記事では投資未経験者がiDeCoを始める際に選ぶべきおすすめの投資信託やその組み合わせ方法などについて解説していきます。

積立投資はできるだけ早い時期にスタートすることが大切です。「iDeCo」や「つみたてNISA」をフルに活用するだけでも老後に必要な最低限の金融資産を形成することは可能ですので、選択肢の一つとしてご検討頂ければと思います。