銀行が低金利の住宅ローンを提供できる3つの理由

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サラリーマンを辞めたことによって得るものもありますが、失うものもあります。特に私が驚いたことは、想像していた以上に経済的な信用を失ってしまうことです。例えばフリーランスの私が家を買うためにローンを組もうと思ってもメガバンクは簡単にOKを出さないでしょう。

ところがサラリーマン時代には35年にも及ぶ長いローンの審査がすんなり通りました。結局、その時はマンションの売り主の気が変わってしまい、私はローンを組むことはなかったのですが、それから数年で私は2回の転職をし、12年後にはフリーランスになっていました。

そう考えると、あの時の銀行は私の何を信用してお金を貸そうと思ったのか不思議に思ってしまうのですが、実は銀行にはしっかりとした勝算があってサラリーマンの私にお金を貸そうとしていたのです。

ここでは銀行が35年という予測不能な将来に渡る長期ローンを簡単に組ませてくれる理由について解説していきます。

会社員は住宅ローンを必ず完済する

お金を借りた人が100%の確率でお金を全額返してくれるなら貸金業は楽な商売なのですが、実際には貸したお金の何%かは返してもらえないのが普通です。銀行はこれまでの貸出業務のデータを分析し、その貸倒れのリスクを「デフォルト率」として把握しています。

優秀な銀行員が優良な法人にお金を貸した場合のデフォルト率は2%~3%の範囲に収まるのではないかと思います。経営が不安定な中小企業の場合にはデフォルト率がもっと高くなるため銀行はなかなかお金を貸したがりません。

本来であれば、デフォルト率の高い相手には高い貸出金利でお金を貸し出すことによってデフォルトによって発生する損失を穴埋めすればいいのですが、今の銀行は「自己資本比率規制(BIS規制)」ルールという国際的な決め事によって、デフォルト率の高い相手にお金を貸しにくい状況になっています。

「自己資本比率規制(BIS規制)」を簡単に説明すると、「銀行は金融機関としての財務的健全性を維持しなさい。リスクの高い貸出をするならそれに見合う自己資本を用意しなさい。自己資本が用意できないならリスクの高い貸出は減らしなさい。」というルールです。

優良企業のデフォルト率が2%~3%であるのに対し、サラリーマンのデフォルト率は0.2%~0.3%程度であると言われています。そして、ローンを組んだことがある人ならご存知だと思いますが、銀行は「ローン保証料」という名目で0.2%~0.3%の手数料を徴収しますので現実的に銀行がサラリーマンに貸し出した住宅ローンは100%の確率で全額が返済される仕組みになっているのです。

儲からない住宅ローンを引き受ける理由

BIS規制の影響

各銀行は住宅ローンを自分の銀行で組んでもらうために格安の優遇金利を提示してくるケースが多く見られます。マイナス金利の今、恐らく銀行は資金調達コストと同じ程度の金利で住宅ローンを組ませてくれています。銀行がこんなに儲けのないローンをサラリーマンに組ませてくれるのはどうしてでしょう。

銀行はマイナス金利の日本でお金を運用する先がなく、お金が余っています。BIS規制の影響でデフォルト率の高い相手への貸出には限界があります。その結果、銀行はデフォルト率の低い住宅ローンへの貸出を積極的に行うことになるのです。

また、住宅ローンを組んだ場合、給料の振込口座や公共料金の引き落とし口座としてローンを組んでいる銀行を指定するのが一般的ですので、銀行はそれらからの手数料を得るのはもちろんのこと、顧客のお金の出入りを完全に把握することができます。

退職金の運用

そして、銀行が最も期待するのが将来入ってくる退職金の運用です。ちょっと気の利いた銀行なら、あなたが定年退職をむかえるタイミングに合わせて退職金限定の特別金利を約束した6ヶ月定期預金などをすすめてくれることでしょう。

退職金が入ったばかりで具体的な運用方法などを決めていないこの時期に、とりあえずは優遇金利の定期預金を利用するという選択は悪くはありません。

ただし、その定期預金が満期になるタイミングで銀行から投資信託や外貨建ての一時払保険などの提案があった場合は提案された商品のリスクとリターンの関係を十分に検討してから購入の判断をするようにしましょう。

1998年までの銀行はリスク商品を顧客に販売することはほとんど無かったため、「銀行=元本保証=安心」という公式が成立していたのですが、1998年の「日本版ビッグバン」から投資信託の窓口販売がスタートし、今では外貨建ての一時払保険などのリスク商品も販売しています。

これらの商品の中には比較的手数料が高いものも含まれています。以前は年率3%前後が普通だった日本投資信託のコストも現在では平均で1%前後まで引き下げられてきています。

金融商品を選ぶ時の基準として販売手数料や信託報酬などの全てのコストを合計して年率1%程度のものを選ぶようにしましょう。

大手ネット証券ではコストの低い投資信託だけでなく、さらにコストの低いETFなども豊富に取り揃えていますので、銀行だけではなく幅広い金融機関の利用をじっくりと検討されてみてはいかがでしょう。

家を持つ安心か、賃貸に住む自由か

持家に住む安心感と満足感

銀行の住宅ローンは比較的少額の頭金でも低金利の長期ローンを提供してくれるありがたいサービスです。税金面でのメリットもありますので、どうしても持ち家が欲しいという人は銀行の住宅ローンを積極的に利用していきましょう。

ただし、実際には35年先までの所得や勤務地が確定している人はさほど多くはないはずです。子どもの成長や実家の状況などの変化も考えると、ローンの途中で別の家に移る可能性についても十分考慮しておく必要があります。

特に郊外の一軒家の場合、これから数十年後の不動産市場の状況によっては何らかの理由があって家を売ってもローンだけが残ってしまう可能性についても考慮しておく必要があります。

例えば、都内で駅から近いマンションなら大きな値下がりリスクはないかも知れませんが、普通のサラリーマンが買える値段の駅近の新築物件はそんなに多くはありません。

賃貸に住むという合理性と自由

子どもの成長やその時の所得の状況に合わせて賃貸の物件に住むという選択は極めて合理的であり、ローンのプレッシャーから逃れることができるだけでなく、様々な自由を手にすることができます。

日本の賃貸物件は安っぽいつくりのものが多いという声が聞こえてきますが、都内では住む期間が限定されている定期借家契約の物件も多くあり、そのような物件では比較的上質なものが多く含まれているように思います。

もちろん「家賃を払っても何も残らない」という不動産屋の営業トークにのせられて家を買う、あるいは世間体を気にして家を買うとしても、現在のような低金利下における不動産投資という面から見て、家を買うとい行為は決して悪い考えではありません。

ただ、年を取って介護が必要になった時、その家で誰かがあなたの介護をしてくれるのであればいいのですが、最後は介護施設のお世話になるのであれば、子供たちが住みもしない家を残すよりも、家を買わずにキャッシュを持っていた方が子供たちへの負担は少なくて済みます。

親が死んだ後の実家の処分は心理的にも実務的にも子供たちの大きな負担になることも考えの中に入れておきましょう。