信託報酬が低くても実質コストが高い投資信託に共通する特徴とは

シェアする

changes

見た目の安さに釣られて衝動買いをしたものの、結果的には高い買物になったという経験は誰にでもあると思いますが、投資信託でも同じようなことは起こり得ます。今回は信託報酬と実質コストの差が大きくなる投資信託の特徴について、実際の投資信託を例にしながら解説していきます。

事前に知ることができる3つのコスト

投資信託のコストと言えば、購入時に支払う「販売手数料」と運用管理費用として支払う「信託報酬」の2つを思い浮かべる人が多いと思います。これ以外のコストとしては信託財産留保額としての「解約手数料」があり、この3つのコストについては投資信託の販売資料のひとつである「交付目論見書」に明記されており、投資信託を購入する前に確認することができます。

「販売手数料」は投資信託を購入する際に販売会社に支払う手数料で、一昔前までは購入額の2%~3%程度の手数料がかかることも珍しくありませんでした。しかし今では「ノーロード」といわれる販売手数料無料の投資信託が主流となってきており、来年1月からスタートする「つみたてNISA」で利用できる投資信託は全て「ノーロード」の投資信託となっています。

「信託報酬」は投資信託の運用をする会社が運用にかかる手間の対価として徴収する手数料で、運用資産額に対して毎年数%の手数料が徴収されます。販売手数料のように購入時に1回だけ徴収される手数料とは違い、毎年徴収される手数料となりますので長期運用においてはパフォーマンスに多大な影響を与えるコストだと言えます。こちらも一昔前までは2%~3%という割高な信託報酬を徴収する投資信託は珍しくありませんでしたが、今では1%を超える信託報酬は高いというイメージが定着しつつある状況です。

「解約手数料」は投資信託を売却する際に発生する諸経費を、売却する当人が負担することで、その他の保有者に迷惑をかけないようにするという「立つ鳥跡を濁さず」という意味合いが強い手数料です。こちらの手数料も少しずつ低くなっており、無料の投資信託も多くなってきています。

決算後の運用報告書で分かるコスト

投資信託には「販売手数料」、「信託報酬」、「解約手数料」という3つのコスト以外にも発生するコストがあるのですが、このコストは事前に開示されることなく決算後の運用報告書を見ないとその金額は分かりません。老舗のお寿司屋さんと同じで、会計時になって始めて確認できるコストであり、それが思ってた金額よりも高かったとしても既にお寿司を食べている以上、支払わないという訳にはいきません。

最近は「信託報酬」の低さだけで投資信託を選ぶという風潮が強くなり、投資信託の運用会社間では「信託報酬」の引き下げ競争が激化しつつあります。しかしながら、見せかけの「信託報酬」だけを低くしても、見えないコストが割高であれば現実的に投資家が支払うコストは想定以上に高くなってしまいます。

例えば、大和証券投資信託委託が運用している「iFree新興国株式インデックス」の信託報酬は0.37%となっています。同じカテゴリに属する投資信託である三菱UFJ国際投信が運用している「eMAXIS 新興国株式インデックス」の信託報酬は0.65%ですので見かけ上のコストは「iFree新興国株式インデックス」の方がかなり低いと言えます。

ところが、「見えないコスト」を含んだ実質的なコストは「iFree新興国株式インデックス」が1.1%、「eMAXIS 新興国株式インデックス」が0.83%となっており、実質コストで比べれば「iFree新興国株式インデックス」の方が3割以上も割高であったというということが分かります。

実質コストが大きくなる投信の特徴

「交付目論見書」に明記されている3つのコストとは別の「見えないコスト」とはいったいどのようなコストなのでしょうか。まずは有価証券の売買手数料が考えられます。例えば、上記のファンドのように新興国市場の株式に投資するようなケースでは流動性の高い先進国の株式市場とは異なり、有価証券の売買コストは割高になる傾向があります。

また、売買手数料は機動的に売買を行うアクティブ運用タイプの投資信託の方がインデックスファンドに比べて高くなる傾向があります。その他のケースとしては、運用初期の段階で急激に運用資産が増えた投資信託では組入銘柄を一度に大量に買付するため売買手数料が跳ね上がる場合があります。

それとは別に、意外と大きなコストがかかるのが、資産の保管にかかる手数料です。顧客資産を安全に保管するために必要なコストは金融システムが整備されている成熟した市場よりも新興国市場の方が高くなる傾向があります。

資産の保管にかかる手数料は固定的なコストと流動的なコストの2階建ての契約になっていることが多く、1億円の資産であっても100億円の資産であっても固定コストの部分は同じ金額を徴収されるため、純資産が少ない投資信託の場合は投資信託一口あたりの負担が大きくなる傾向があります。

1万口あたりのコストは運用報告書に記載されていますがモーニングスターのHPでも簡単に確認することができます。以下は「iFree新興国株式インデックス」と「eMAXIS 新興国株式インデックス」の1万口あたりのコストですが、「iFree新興国株式インデックス」の純資産は2017年12月時点で13億円弱、「eMAXIS 新興国株式インデックス」の純資産は437億円強となっており、この差が1万口あたりのコストに反映しているものと考えられます。

<1万口当たりの費用明細>

費用項目iFree新興国株式インデックスeMAXIS 新興国株式インデックス
信託報酬35円75円
売買手数料22円4円
有価証券取引税7円2円
保管費用64円15円
 

まとめ

投資信託のコストを判断する際には「交付目論見書」に明記されている「信託報酬」だけではなく、「見えないコスト」も含めた実質コストも考慮しておく必要があります。

「見えないコスト」が大きくなりやすい傾向があるのは、「純資産の小さい投資信託」、「新興国市場に投資する投資信託」、「頻繁に売買を行うアクディブ運用タイプの投資信託」です。

投資信託の実質コストは運用報告書の一口あたりの費用明細を確認することで過去のコストを知ることができますが、「見えないコスト」は固定的なものではないことを頭に入れておきましょう。

信託報酬の低い投資信託でも実質コストが割高になることがあります。信託報酬の低さに釣られて一度も決算をむかえていない投資信託にあわてて投資するよりも、信託報酬が多少高くても実質コストとの差が小さい投資信託を選んだ方が実際には低コストな運用ができることも多いように思います。