ロボアドのサービスを選ぶ場合、自動リバランス機能の有無を選択の基準として考える人が増えています。リバランスの方法や頻度はロボアドによって異なりますが、どのような方法で、あるいはどの程度の頻度でリバランスするのがいいのかについてはあまり議論されることはありません。そこで今回は代表的なロボアドのリバランス機能を比較して解説していきます。
ロボアドは競争時代に突入
2018年1月からスタートの「つみたてNISA」などの影響により、投資信託の信託報酬が下がり、長期国際分散投資によるリターンを狙いやすい環境が整うにつれ、ロボアドのサービスに参入する企業の数も随分と増えてきました。
市場としてはまだだま小さな分野ですが、参入する企業が増えるほど競争は激化し、利用者の利便性は今後ますます向上していくだろうと考えられます。
例えば、ロボアドの手数料については日本のロボアドは年間1%というのがスタンダードになっていますが、アメリカと比べるとまだ下げ余地はありそうです。
アメリカのロボアド大手では運用資産が100万円程度までは手数料は無料、運用資産が100万円程度を上回ってきたら0.25%の手数料という会社がいくつかありますので今後の落とし所はこのあたりになりそうです。
2017年10月25日からサービスを開始したマネックス証券のマネックスアドバイザーでは手数料を0.3%まで引き下げています。マネックスアドバイザーにご興味のある方は以下の記事でまとめてありますので是非ご覧下さい。
売買によるリバランス機能は税金が問題
ロボアドでの運用を開始する際には最初に利用者の年齢、投資経験、リスク許容度などに合わせ、投資対象と分散比率をロボアドが決定します。ロボアドによる運用は、巨額な資産を運用している機関投資家が利用しているものとほぼ同じアルゴリズムをベースに行われます。
ロボアドは、このようなアルゴリズムに従って、株式市場、債券市場、不動産市場などの様々な資産クラスに資金の何%を配分するかを決定し、その配分に従って分散投資されたポートフォリオによる運用を行います。
ところが運用を続けていくうちに特定の資産クラスは価格が上昇し、別の資産クラスは価格が下落するという状態が発生し始めます。当初決めた分散比率通りに積立投資を続けていても、それぞれの資産クラスの価値はランダムに変動していきますので、保有資産全体のバランスは当初計画して決めた分散比率とは徐々にズレてしまいます。
そこで、値上がりした資産クラスの一部を売却し、それによって得た資金で値下がりしている資産クラスを買い足すことにより、当初計画していた分散比率に戻す行為が「売買によるリバランス」です。
売買によるリバランスで注意しなければならないことは、値上がりした資産クラスを売却した際に発生する利益に対する税金です。売却によって利益が発生すれば当然ながら税金を支払わなければならず、その結果として自分の運用している資産が支払った税金分だけ減ってしまうという現象がおきます。つまりリバランスの度に税金分だけ資産が減っていくという訳です。
「ウェルスナビ」はこの問題を解決するためリバランスは6ヶ月に1回を原則とし、利食いの金額が一定額を上回る場合、評価損が出ている資産クラスを売却して損失を発生させ、その0.5秒後に売却した資産クラスを同じ価格で買い戻します(クロス取引)。このように「ウェルスナビ」では、利食いによって発生した利益をクロス取引で損失を出すことで減らし、税金の支払いを最小限にする「DeTax機能」を国内で唯一実装しているロボアドです。
もちろん評価損が発生している資産クラスがなければ「DeTax機能」での節税はできませんので完璧な対策ではないのですが、何もしないでリバランスを頻繁に行うロボアドよりも「ウェルスナビ」のロボアドは優れていると言えるのかも知れません。「ウェルスナビ」にご興味ある方は下記の記事で最新の情報をまとめてありますので是非ご覧下さい。
「ウェルスナビ」の「DeTax機能」と同じ機能としては「THEO(テオ)」では「THEO Tax Optimizer (テオ タックス オプティマイザー )」を装備していますので、リバランスにおける税金問題については「ウェルスナビ」と「THEO(テオ)」についてはクリアされています。
買付によるリバランスは税金を考慮
リバランスのために売買を行うと税金の問題が発生するので、毎月の積立時に買付比率を調整してリバランスを実行する機能がマネックス証券の「マネックスアドバイザー」(スマート積立)と松井証券の投信工房(リバランス積立)には実装されています。
「マネックスアドバイザー」を利用したスマート積立によるリバランスやその効果については以下の記事で実際の取引画面をご覧いただきながら解説していますので是非ご覧下さい。
値上がりしている資産クラスは買付を見合わせ、値下がりしている資産クラスの買い足しを行うことにより、毎月の積立による買付時にリバランスが行われるため、税金の支払いをすることなくポートフォリオを最適な状態に保つことができる「スマート積立」は、売買によるリバランスよりも合理的な発想だと言えます。
ただし、長年の積立によって運用資産が増えていくと、毎月の積立金額ではリバランス効果が十分に発揮できなくなるリスクがあります。そのため「マネックスアドバイザー」では「スマート買付」や「リバランス注文」などのよって、必要に応じて簡単にリバランスを実行することができるような機能を実装しています。
「マネックスアドバイザー」のリバランス機能につきましては、以下の記事で詳細に解説していますので是非ご覧下さい。
リバランスの頻度と方法を比較する
ウェルスナビは運用データの分析結果から頻繁にリバランスを行っても運用実績に大きな変化はなく、半年に1回で十分だという結論に至っているようです。それに対して「THEO(テオ)」は毎月のように細かくリバランスを行うことで、ベンチマークを上回るリターンを目指すというスタンスです。
リバランスを自動で行わず、大きな変化があった場合にのみリバランスを提案するというロボアドもあります。ご参考までに主要なロボアドのリバランス機能について下の表にまとめてみました。
提供会社 | ロボアドの名称 | リバランスの頻度と方法 | 節税 |
---|---|---|---|
ウェルスナビ(株) | ウェルスナビ | 年2回の自動売買による | ○ |
(株)お金のデザイン | テオ(THEO) | 毎月の自動売買による | ○ |
マネックス証券 | マネックスアドバイザー | 自動積立時(スマート積立) | ○ |
マネックス証券 | ON COMPASS | 適宜自動売買による (原則四半期ごと) | × |
楽天証券 | 楽ラップ | 自動売買による(頻度は不明) | × |
松井証券 | 投信工房 | 自動積立時(リバランス積立) | ○ |
長期積立投資においてリバランスを行う場合と行わない場合ではリターンに差が出ることは広く知られています。ロボアドでの運用に限らず、「つみたてNISA」や「iDeCo」などのように、ご自身で運用されているポートフォリオについても半年に一度くらいはリバランスを行ってみてはいかがでしょう。
「iDeCo」の場合は非課税制度なので売買によるリバランスを必要なタイミングで行うことができますが、「つみたてNISA」の場合は同じ非課税制度でも売買を伴うリバランスによって年間の投資枠を無駄に消費してしまうリスクがあります。
従って「つみたてNISA」でのリバランスでは「スマート積立」のように積立の際にバランスを調整して買い付ける必要がありますのでご注意下さい。