さわかみ投信が金融庁に噛み付いて「つみたてNISA」をスルーする理由

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つみたてNISAの口座開設受付が開始された10月2日、さわかみ投信のホームページには「つみたてNISAに関しまして」というタイトルのお知らせがアップされていました。

楽天証券やSBI証券など、多くの金融機関がつみたてNISAの口座開設受付を開始し、口座獲得のためのキャンペーンをスタートした当日、さわかみ投信がつみたてNISAの導入を見送るという内容のお知らせをアップしたことで、金融庁が作り上げてきた「つみたてNISA」のお祭りムードは冷水を浴びせられてしまいました。

この記事ではさわかみ投信がどうしてつみたてNISAをスルーしたのかについて考えていきます。

運用会社として他にやるべきことがある

さわかみ投信のホームページにアップされたお知らせを読むと、つみたてNISAの導入を見送る理由の最たるものとして「運用会社として他にやるべきことがあるから」ということが書かれています。

さわかみ投信が言いたいことをオブラートで包んだ結果としてこのような表現になっているのでしょうが、あえて私がそのオブラートを勝手に破ってしまうと「なんか勝手に盛り上がっているけど、こっちはそんなものに参加しているほど暇ではない」ということなんだと思います(あくまで私の個人的な解釈です)。

つみたてNISAを利用して投資できる投資信託は2017年10月10日時点で122本であり、5000本を超える投資信託の数から考えると極端に投資対象が少なくなっています。

122本の内訳を見ると、市場連動型のインデックスタイプのファンドが98本なのに対してアクティブ運用のファンドはわずか14本となっています。

金融庁は「長期分散投資による若年層の金融資産形成を後押しする」という「つみたてNISA」の目的を実現するため、投資対象ファンドに対しては販売手数料および運用報酬について厳しい制限を設けています。

当初は5000本を上回る投資信託の中から金融庁の出している条件をクリアできる投資信託は50本程度だと言われていましたが、各運用会社の努力によって現在までに122本まで増えてきたという経緯がある中で、さわかみ投信が運用するさわかみファンドはアクティブ運用のファンドでありながら、最初から金融庁の条件を満たしていた優秀なファンドであることをここで明言させて頂きます。

従いまして、当然ながらさわかみファンドはつみたてNISAの運用対象として金融庁への届け出があるだろうと誰もが考えていたところ、「運用会社として他にやるべきことがあるから」という理由からさわかみ投信はつみたてNISAをスルーしたのです。

さわかみは金融庁の顔をたててきた

さわかみ投信は制度的には欠陥だらけのNISAに対しては2014年から積極的に取り組んでいます。

NISAの運用期間は5年(ロールオーバーで最大10年)しかなく超長期運用を提唱するさわかみファンドが得意とする分野ではないのですが、運用期間の延長あるいは恒久化などといった改善がなされることに期待して取り組みを継続しているのです。

このように多少の無理をしてでも金融庁の顔をたててきたさわかみ投信ですから、20年という長期間の運用が可能なつみたてNISAにさわかみファンドが参加するのは当然だと思われたのですが、今回さわかみ投信がつみたてNISAをスルーしたのはなぜなのでしょうか。

それは金融庁が「長期分散投資で成功するためにはインデックスファンドを選択するべきであり、現在の日本のアクティブ運用ファンドは運用会社や証券会社の手数料稼ぎの道具となっているものが大半である」という考えをベースにつみたてNISAの対象商品を選んでいることと無関係ではないと思います。

アクティブファンドは長期の運用においてはインデックスファンドのパフォーマンスを上回ることは稀であるという考えは著名な書籍である「ウォール街のランダム・ウォーカー」の中で展開されており、1973年の書籍でありながら、今でもこの考えを支持する人は多く、個人的にも素晴らしい本だと思います。

アクティブタイプのさわかみ投信

アクティブ型は手数料稼ぎに利用された

日本の投資信託を純資産額が多い順(売れている順)に並べた場合の上位10本と、米国の上位10本を比較すると、米国の上位1位から4位までを販売手数料がゼロで信託報酬の安い(コストの低い)インデックス型ファンドが占めています。それとは逆に日本では上位10本全てが販売手数料と信託報酬が高い(コストの高い)アクティブ型ファンドが占めています。

これは日本の証券会社が販売手数料の高いアクティブ型ファンドばかりを顧客に販売していることを意味しています。

また、それらのファンドの大半は組成されて数年もすれば運用資産の規模がピークの半分以下まで減少していることから考えると、さらに別のアクティブタイプのファンドに乗り換えさせられている(ファンドの回転売買で顧客は再び高い手数料を取られている)ことが想像されます。

また、アクティブ運用とは名前だけで実際は市場連動に近い銘柄組み入れのくせに販売手数料や運用報酬だけが高いようなファンドもあったりします。

野村證券の誕生100周年を記念し、当時の野村証券がグループの全勢力をあげて売り出した、1兆円という前代未聞の募集額を誇った「ノムラ日本株戦略ファンド」。このファンドの悲劇の17年から私たちは長期投資についての大切なことを学ぶことができます。

さわかみファンドはiDeCo向き

金融庁が今回のつみたてNISAの対象商品選択基準において、販売手数料や信託報酬に厳しい基準を設けたのは、このような手数料主義が蔓延する投資信託をとりまく環境について警鐘を鳴らす意図があったはずです。

金融庁がつみたてNISAの対象となるアクティブ運用タイプの投資信託として当初ピックアップしたのは6本だけであり、そのひとつがさわかみファンドでした。

さわかみファンドは18年も前から金融庁が理想とするアクティブ運用タイプの投資信託の条件を満たしており、だからこそ独立系の運用会社として高い評価を得ながら運用資産を増やし続けてこれたのです。

それを今さら金融庁から「あなたのファンドは合格です」と言われても、「いやいや、うちは別につみたてNISAありきでそれに寄せた商品設計をしてきた訳ではないし、そんな制度に乗っからなくてもさわかみファンドは十分に売れていますから」という気持ちになったとしても不思議ではありません。

また、つみたてNISAは2037年までの期限がある制度であり、期限直前にまとまった解約が発生した場合、他のお客様に迷惑がかかるというリスクもあり、現行制度の見直しがない限りは見送りたいという気持ちもさわかみ投信にはあると考えられます。

本当に長期分散積立投資のメリットを享受したいなら「つみたてNISA」ではなく「iDeCo」を利用してさわかみファンドを購入する方がお客様にもさわかみ投信にもメリットがあるのは確かです。

それでもアクティブ型の投信は必要

投資信託がインデックスタイプばかりになってしまうのも問題です。一部では、既に日本の株式市場における現物株の売買高の半分近くはインデックス運用による売買になっていると言われています。

インデックス運用は株式市場に連動して動く訳ですから、株式市場に大暴落が発生すればそれに連動して大暴落します。

もちろん長期分散投資においてはドルコスト平均法によってそのようなイベントがあっても、それなりのパフォーマンスが出せるだろうという考え方がベースにありますので若年層がこれから利用する分には問題はありません。

しかしながら、つみたてNISAは若者だけが利用する訳ではなく、50代のサラリーマンだって利用します。若者と比べて運用期間が短い彼らにとってインデックスファンドが最高の選択だとは限りません。

リターンは大きくなくてもいいから損失が少なくなるようなリスク抑制タイプのアクティブ運用ファンドは50代のサラリーマンのニーズをある意味満たしているのではないでしょうか。

アクティブ運用だからといって、全てが市場全体よりも高いパフォーマンスを目指している訳ではなく、市場全体の動きに対して低いパフォーマンスでもダウンサイドのリスク低減を目指すものだってあるのです。

アクティブ運用はファンドマネージャーがどのような運用を目指すのかを明確に開示し、その通りの運用をして儲かっているのであれば、いくら手数料が高くてもそれは問題ではありません。

「投資信託を選ぶ基準は、インデックス運用なのかアクティブ運用なのか、あるいは手数料が安いのか、高いのかではなく、儲かるのか儲からないのか、あるいは投資家のニーズに合っているのかいないのかがファンドを選ぶ基準である。」ということをさわかみ投信は今回の件で言いたかったのではないでしょうか。