つみたてNISAではシャープレシオで投資信託を選んではいけない

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2018年からスタートするつみたてNISAは年間最大40万円を最長20年間積立てていくことにより、運用利益に対してかかる税金を免除してくれるという制度です。

このように年間の積立上限額や最長運用期間が限定されているうという特殊なルールで運用するつみたてNISAでは、一般的な投資の常識にとらわれてしまうと十分な運用成果を得られない可能性があります。

この記事では上記のような特殊なルールで最大限の利益を狙うための投資信託選びのポイントについて解説していきます。

ドルコスト平均法のメリットを再確認

積立投資におけるドルコスト平均法を考える場合の前提は「毎月同じ金額を投資する」ということです。例えば、あなたが選んだ1万円の投資信託が毎月100円ずつ値上がりした場合を考えてみましょう。

毎月の積立額が1万円だとすると最初の月には1万円で1万口の購入ができますが、次の月には9900口、更に次の月には9803口、9708口、9615口、9523口、というように投資信託の値上がりに比例して買い付けできる毎月の投資信託の口数が減少していきます。

それとは逆に、毎月100円ずつ値下がりした場合には値下がりに比例して買い付けできる毎月の投資信託の口数が増えていきます。

このように、毎月決まった金額で投資信託を買い続けることであなたが得られる「ドルコスト平均法によるメリット」とは、あなたが選んだ投資信託の基準価格が安い時には多めに買い付けて、高い時には少なめに買い付けることで買付平均価格を引き下げることができるということです。

投資信託におけるリスクを再認識

日常生活においてリスクという言葉は「危険」という意味で使われることが多く、このことが投資においてのリスクを語る上で多くの人が勘違いをしてしまう原因です。

投資におけるリスクとは危険という意味ではなく、「バラつき」という意味を表しています。例えば、1万円の基準価格からスタートした投資信託が毎年10%ずつ10年間値上がりをしていくという場合、毎年10%ずつ決まった増え方をしていますので収益率に「バラつき」がありません。このような状況を投資の世界ではリスクがないといいます。

同じように1万円の基準価格からスタートした投資信託が毎年10%ずつ10年間値下がりするケースにおいても毎年10%ずつ決まった減り方をしていますので収益率に「バラつき」がありません。このような状況も投資の世界ではリスクがないといいます。

日常生活では値下がりを続ける投資信託のせいで自分のお金が毎年減っている訳ですからこの投資信託にリスクがないと言われても「ふざけるな」という気持ちになるでしょうが、投資の世界でのリスクはバラつきのことですから、儲かるとか損をすると言った運用による収支とは無関係であることを理解してもらえればと思います。

長期積立投資ではリスクもメリット

制度の特殊性を考慮した戦略が必要

つみたてNISAは毎月の積立金額と投資期間に制限がある特殊な運用環境にあることは既に述べました。来年1月から毎月3万3000円ずつ積立をした場合、1年間に39万6000円、20年間で792万円という金額があなたが積立てることができる最大の金額です。

この800万円弱を長期積立投資のメリットを最大限に利用して、1000万円、2000万円に増やしていくことが、これからつみたてNISAを始める若い人たちの目的なのですが、何の戦略も持たずに誰でも簡単に目的が達成できる訳ではありません。

始めた年と20年後の価格が同じケース

あなたがつみたてNISAを利用して、適当だと思う投資信託を選んで20年間毎月3万3000円ずつ積立てたとします。不幸にもあなたが選んだ投資信託はスタートした時の基準価格が1万円、20年後の基準価格も1万円だったとした場合のことを考えてみましょう。

このケースであなたの儲けが大きくなる条件は、20年という期間のうち、どれだけ値下がりした期間が長く、値下がり幅が大きかったかという点です。思い出して下さい、ドルコスト平均法のメリットは値下がりした時に多くの口数を購入し、値上がりした時には購入する口数が減ることによって平均購入単価が引き下がることでしたね。

投資をスタートした時と20年後の投資信託の基準価格が同じであれば、毎年のリターンが平均リターンに比べて大きくブレる(リスクが高い)投資信託の方が、毎年同じリターンを出し続ける(この場合は毎年のリターンがゼロでリスクもゼロ)投資信託よりも「ドルコスト平均法のメリット」を受けやすい傾向があります。

適当なタイミングで利益確定を行う

リスクがゼロでも儲けもゼロならば、投資の意味はありません。それとは逆に、リスクの高い(バラつきの大きい)投資信託であれば、例え20年後の基準価格が初年の基準価格と同じであっても大きなリターンを得る可能性があります。

ここで問題になるのは初年の基準価格と20年後の基準価格が同じ場合で、20年という期間のうちに値下がりがあまりなく、値上がりしている期間が長い場合、最終的な利回りがマイナスになるケースです。

つみたてNISAのように期限を決められている特殊なルールで運用する場合、単純に積立てを続けるだけではなく、目標利回りや市場の過熱感などを見極めて、積立ての一部については売却によって利益を確定することも必要となります。詳しくは下記の記事にまとめていますのでご興味のある方は是非ご一読下さい。

2018年1月から「つみたてNISA」がスタートしました。この記事では「つみたてNISA」の金融機関の選び方や、144本もある投資信託の中から何を基準に投資信託を選び、どのような出口戦略を準備すればいいのかについて解説しています。

標準偏差やシャープレシオで考えない

お金持ちのスポット投資は安全第一

ある程度のまとまった資金を一度に投資するのであれば、リターンのバラつきを数値化した標準偏差や、いかにバラつきを少なくしてリターンを実現してきたかを数値化したシャープレシオを参考に投資信託を選ぶことは非常に重要です。

例えば、過去3年間の年平均リターンが10%、標準偏差が20%の投資信託の場合、68.3%の確率でこの投資信託のリターンはマイナス10%からプラス30%の範囲に収まるということが事前に予測できます。

リターンがなるべく高く、標準偏差がなるべく小さい(リスクが小さい)ものを選べばリターンがプラスになる可能性は高くなりますので、分子をリターン、分母を標準偏差(リスク=バラつき)にして計算したシャープレシオが高いものを選ぶことが投資信託選びの鉄則だと言われれるのはこのような考えかたがあるからです。

お金持ちの投資と少額の長期積立投資

しかしながら、この鉄則はお金持ちが一度にまとまった資金で投資信託を買う場合のお話で、若い人がこれから少額の資金を積立てて老後資金を作ろうという場合には、シャープレシオだけで投資信託を選ぶことはあまりにも保守的過ぎて十分な運用成果が得られない可能性もあります。

つみたてNISAでは、ある程度のリターンのバラつきがあるものを選んだほうがドルコスト平均法のメリットをいかせることを理解した上で、シャープレシオの大きいものだけに投資するのではなく、ある程度のリスク(リターンのバラつき)がある投資信託もポートフォリオに組み入れて、必要なタイミングで利食いも考えるくらいの柔軟さが必要です。