積立投資に個人の相場予想を持ち込んではいけない理由とは

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ここ数年の堅調な株式市場の値動きにより、積立投資の有効性を実感する人が増え、来年から始まる「つみたてNISA」をきっかけに、積立投資をスタートするという人も多いだろうと思います。今回は積立投資に将来の価格変動の予想を持ち込むことのリスクについて解説していきます。

将来の価格を予想する難しさ

今後の株式市場の値動きを予想し、その予想に合わせた投資戦略を実行すれば、その予想が的中すれば大きなリターンを得ることが可能ですが、予測が的中しなければ大きな損失を被る可能性もあります。日本でも古くは米相場の時代からチャート分析やファンダメンタルズ分析、心理学的アプローチなどによる相場予想の手法が研究されており、現在では人工知能を利用したコンピュータによる売買が盛んに行われています。

しかしながら、現時点においても「相場の必勝法」というようなものは発見されておらず、このことは将来の価格変動を的確に予想することがいかに困難なことであるかを物語っています。

価格の予想は長期になるほど難しくなる

日経平均株価を予想する場合、30秒先、30分先、3ヶ月先、30年先、というように期間が長くなればなるほど的中率は低くなります。30秒先の株価を考える場合、今から30秒間で株価に大きな影響を与える出来事が発生する可能性は極めて低いため、現在の株価から大きく動くことは少なく、価格の予測変動幅は非常に狭くなることが予想されます。

ところが、30年先の株価の場合、今から30年間で何が起きるのか想像することは困難であり、30年先の株価の予測変動幅は非常に広くなるため、予想を的中させることは極めて困難です。

方向性の予想は長期の方が簡単な場合も

価格の予想は長期の方が難しいのですが、価格の方向性の予想では長期の方が簡単な場合もあります。今から1ヶ月先、1年先、10年先のNYダウが今よりも高いか安いかという方向性だけで考えた場合、1ヶ月先、1年先については意見の分かれるところですが、10年先は今よりも高いだろうと思う人が多いのではないでしょうか。

過去のNYダウの値動きを見る限り、10年という期間があれば右肩上がりの値動きが期待できるというだけではなく、世界経済の中心である米国の株式市場が10年以上も成長しないことは考えにくいからです。だからと言って、「Apple」や「facebook」の10年先の株価がどうなっているのかについては全く予想がつきません。方向性が予想できるのはあくまで市場全体の動きに限定されます。

積立投資は最低でも10年以上の期間において価格変動の方向性が右肩上がりになるものに対して行うことでリターンを出す投資戦略であり、米国の株式市場は積立投資の対象としては最有力の投資先であると言えます。

積立投資に相場の予想は不要

積立投資は、数ヶ月や数年という期間における価格変動が右肩上がりでも右肩下がりでも10年以上の期間で見れば右肩上がりに推移するものに投資します。従って、積立投資は相場の予想とは無縁のものであり、価格の上げ下げに一喜一憂することなく、毎月ひたすら積立を実行することだけが求められます。

仮にリーマンショックのような出来事が再び起きれば株価は半分程度に下がる可能性があり、元に戻るまでには4年~5年程度の時間を要するかも知れません。そんな時でも平気で積立を続けることができる人と、あれこれと考えて積立投資を止めてしまう人とではリターン面では天と地ほどの差が出てくる可能性があります。

これから積立投資をスタートする人は、どこかで相場の下落局面に出会うだろうと思いますが、よほどのことがない限り、積立投資は止めない方が良い結果となる場合が多いことを理解してもらいたいと思います。相場を予想する投資では相場を見ながら「安く買って高く売る」ことが必要ですが、積立投資では相場に関係なく「安くても高くても買い続ける」ことが重要です。

積立投資をスタートできないリスク

積立投資に相場の予想を持ち込むと、今のような株式市場が高値を更新するタイミングでは投資をスタートできなくなります。相場予想を持ち込むと、できるだけ安いところから始めたいという気持ちが強く働くため、今のような高い値位置から投資をスタートすることができないのは当然です。この場合、このまま右肩上がりの相場が続くと積立投資をスタートすることなく大きな上昇相場を黙って見送ることになります。

また、実際に株価が下がり始めると「一番安いところからスタートしたい」という気持ちが働き、なかなか投資をスタートすることができなくなります。やっと決心して投資をスタートしても、既にスタートしていた人とは積立金額に大きな差があるため価格が上昇した場合のリターンには大きな差が出てしまいます。

だったら、安値だと思った時に、一度に大きな資金を投資すればいい訳ですが、それを積立投資と呼べるのかどうかは疑問です。値位置に関係なくスタートできるのが積立投資のメリットのひとつですが、相場の予想を持ち込むとそのメリットは消えてしまいます。

利食いと損切りのリスク

積立投資に相場の予想を持ち込むと、利食い(利益確定)や損切り(損失確定)が頻繁に行われてしまい、結果的には積立投資ではなくなって、普通の投資になってしまうリスクがあります。

「高いところで利食って、安いところで買い直す」と聞くと非常に合理的なのですが、タイミングを逃すと「高いところで利食いって、更に高いところで買い直す」ことになったり「高いところで利食って、そのまま買い直せずに更に高値がつくのを指をくわえて見る」ことになるケースが多く、結果的にはリターンの拡大に結びつかないだけでなく、利益に伴う税金の分だけ資金が目減りしていくことにも注意が必要です。

また、10%や20%程度の評価損失で損切りしていては、それ以上のリターンを狙うことはできません。通常の投資とは異なり、事前に投資からの撤退ポイントを決めて無条件に撤退するというやり方は積立投資には不向きです。あくまで右肩上がりの値動きを前提とした投資ですので、この前提が崩れるような事態が発生しない限り、損切りは行うべきではありません。

積立投資が機能しない値動き

10年以上、右肩下がりの相場では積立投資は機能しません。このような値動きは積立投資の大前提となっている「右肩上がりの値動きのものに投資する」というルールに違反しているからです。このような右肩下がりの状況が将来に渡って続く可能性が高いと考えられる合理的な理由があるなら積立投資は終了するべきでしょう。

また、スタートから上昇を継続し、ゴールではスタート時と同値以下になってしまうような値動きに対しても、積立投資は機能しません。この場合はゴールポストを移動させるというのが一番の解決法です。右肩上がりの前提に変更がなければ、ゴールポストをあと10年程度先へ移動することにより、大きなリターンを得る可能性が出てきます。

このように積立投資が機能しないのは積立投資の大前提が崩れた時だけであり、それ以外のケースでは必ず機能します。個人の相場予想を持ち込むことでリターンを大きくできる場合もあるでしょうが、それよりも高い確率でリターンを小さくする可能性もあることは理解しておきましょう。

まとめ

自分の相場予想に自信があるなら積立投資とは別の口座でスポット投資をするべきであり、積立投資には相場予想を持ち込まない方が良い結果になりやすいということは、アクティブ運用の投資信託とインデックス運用の投資信託における運用成績の差を見れば明らかです。

運用のプロが投資をするアクティブ運用の投資信託が、市場全体の動きに連動するインデックス運用の投資信託よりも運用成績が上回る確率は30%前後だと言われており、10年以上に渡って勝ち続けることは極めて難しいことだと考えられます。

個人の相場予想はあてにならないからこそ、積立投資という投資戦略を行っている訳であり、それが当たるなら普通に投資した方が短期間で簡単に大きなリターンを得ることができます。積立投資は相場の予想を放棄した上で成り立っていることを忘れないようにしておきましょう。