インデックスファンド最強説は本当か

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投資信託を大きく2つに分類すると特定の市場平均に連動するインデックス運用とファンドマネージャーの裁量で投資対象や売買のタイミングを決定するアクティブ運用に分類できます。

例えば、TOPIXや日経平均といった日本の株式市場に連動するインデックス運用の投資信託であれば、日本の株式市場が下がれば投資信託の価格も下がります。

アクティブ運用の投資信託ではファンドマネージャーが選んだ投資対象の値動きに連動して投資信託の価格が連動しますので、日本の株式市場が上がったからといって投資信託が値上がりするとは限りません。

投資信託としての仕組みは両者とも同じなのですが、世間では長期投資を前提とした場合、運用のパフォーマンスにおいては、アクティブ運用の投資信託はインデックス運用の投資信託に勝てないということが定説となっているように感じます。

この記事ではアクティブ運用、インデックス運用、それぞれのファンドに投資する投資家の心理を分析しつつ、長期運用におけるパフォーマンスに違いが発生するメカニズムについて解説していきます。

インデックス運用最強説の根拠

世間では「インデックス運用の投資信託を長期積立投資していくことが最も簡単かつ合理的に金融資産を増やしていく方法である。」というような事が書いてある書籍やブログをよく見かけます。インデックス運用派の主張をまとめると以下のようになります。

「将来の値上がりを予測して個別株や市場のテーマを選んで投資しても、結局のところ株価の値動きを正確に予測することは不可能であり、予測の当たりハズレに一喜一憂するような投資は長期的に見れば市場全体の値動きに連動する投資手法に勝つことは稀である。」

このように言われてしまうと納得する人は多いと思いますし、上記の内容を証明するような統計的資料も過去のデータからいくらでも作ることが可能です。

日本市場、アメリカ市場、新興国市場などといった様々な条件のもとでアクティブ運用のファンドと市場平均連動型インデックスファンドのパフォーマンスを比較した場合、ざっくりとした表現で恐縮ですが、9割から8割のアクティブ運用ファンドがインデックス運用ファンドのパフォーマンスに負けています。

アクティブ運用派に言わせると、「2割も勝っているんだからその2割を買えばいい」ということなのでしょうが、事前にその2割に該当するアクティブ運用ファンドが分かれば誰も苦労しないのではないでしょうか。

以上のように、「過去のデータからインデックス運用に勝つアクティブ運用のファンドはせいぜい2割しかない」、「インデックス運用に勝つアクティブ運用ファンドを事前に知る方法がない」という2点がインデックス運用がアクティブ運用より優れているという定説の根拠となっています。

インデックス運用ストレスが小さい

アクティブ運用のファンドを勧められて買った直後に大きく値下がりした場合、買った人が勧めた人を恨みたくなる気持ちは理解できます(最終的には自己責任なので誰も責めることはできないことは承知したうえでのお話です)。

しかし、インデックス運用のファンドを勧められて買った直後に大きく値下がりした場合は、市場全体が下がったのだから仕方がないと考え、きっとどのようなファンドを買ったところで市場全体が下がっている状況では結果は同じであり、運が悪かったと思うことで自分を納得させることができます。

また、その後もファンド価格が下落を続けた場合、アクティブ運用のファンドを買っている人は「このファンドはダメかも知れない。このままどんどん下がり続けるかも知れないし、傷が深くなる前に売ってしまった方がいいかも」というようなストレスを感じる人が増えてきます。

それに対してインデックスファンドを買っている人は「長い目で見れば、いずれ市場は回復するはずだから、余裕のある時にナンピン買いでもしよう。」という長期運用モードに入ることでストレスなく運用を継続することができます。

多くのアクティブ運用ファンドが運用開始から数年もすれば運用資産がピークの半分くらいまで落ちてしまうのは、証券会社の営業マンが投資信託の回転売買を推奨しているからという以外に、ストレスに耐えれなくなった投資家がファンドを売ってしまうからという理由もあるのではないでしょうか。

ノムラの1兆円ファンドも運用開始から17年経過して元本まで回復しましたが、運用資産はピークから9割ほど減少しています。

野村證券の誕生100周年を記念し、当時の野村証券がグループの全勢力をあげて売り出した、1兆円という前代未聞の募集額を誇った「ノムラ日本株戦略ファンド」。このファンドの悲劇の17年から私たちは長期投資についての大切なことを学ぶことができます。

ファンドの上昇局面についても同じ現象が見られます。一度下がったファンドが買値まで値上がりした場合、アクティブファンドを買っている人は「やれやれ、やっと元に戻ってきたな。値上がりしている理由はよくわからないけど、今売れば少しは利益が出るだろうから一旦売却しておこうかな。」という気持ちになる人が出てきます。

インデックスファンドを買っている人の場合はファンドの価格が戻ってきたとしても、戻ってきた理由が市場全体の回復という明確な理由ですので、慌てて売る必要を感じる人は少ないだろうと思われます。どちらかと言うと、「インデックスファンドは価格が下がってもこうして戻ってくるものである」という確信を持つようになる人が増えるのではないでしょうか。

このようにインデックスファンドは長期運用する際の心理的なストレスがアクティブファンドに比べるとかなり小さいため、投資の初心者でも安心して保有し続けることができるのに対し、アクティブファンドは上がっても下がっても安心して保有し続けられない傾向があり、長期運用に向いていないものが多いと言えます。

アクティブ運用といっても千差万別

インデックス運用の運用手法はシンプルなので一括りにしても問題ありませんが、アクティブ運用の運用手法は千差万別ですので一括りでインデックス運用と比較することにはそもそも無理があります。

アクティブ運用だと謳って高い手数料をもらいながら、実際に投資している銘柄を見るとインデックス運用に近いようなものや、リスクを限定する設定になっている代わりにリターンも小さく設定されているものなどについてはそもそもインデックス運用に勝てるパフォーマンスを出すつもりがありません。

アクティブ運用のパフォーマンスを悪化させている最大の原因である販売手数料や信託報酬の割高さについても最近は変化が見られます。

インデックスファンドの世界最大手であるバンガード社でもアクティブ型のファンドを出していますが、信託報酬は株式投資信託で0.39%、債券投資信託で0.16%と極めて低い水準まで下がっています。

日本でも来年からスタートするつみたてNISAに採用されているアクティブ運用ファンドでは信託報酬が0.54%(税込み)という低いものもあります。ただし、手数料が低くても肝心のリターンが小さければ意味はなく、コストとリターンのバランスがとれているのかどうかを見極めることが重要です。

日本でアクティブ運用の投資信託がこれだけ悪者にされているのは手数料に見合うだけのパフォーマンスが出せないことを承知の上で顧客に売り付け、回転売買をさせてきた一部の証券会社による悪しき行いのせいであり、アクティブ運用そのものが悪い訳では決してありません。

過去の統計データではインデックスファンドに優位性があることは事実ですが、例えばつみたてNISAに採用されている投資信託を今から3年前を起点に毎月定額で積立投資をした場合、運用成績の上位はアクティブ運用タイプのものが独占するはずです。

これはここ数年の株式市場の動きがアクティブ運用に向いていたからかも知れませんが、証券業界が一丸となってアクティブファンドのパフォーマンス向上に努め、自社の収益を優先するのではなく顧客のニーズに合った商品を開発すれば、アクティブファンドのイメージも少しずつ向上してくるのではないでしょうか。