日本では今でもある年代以上の一部の層では「転職」をネガティブなものとしてイメージし、私のように6回も転職しているような人を見ると、「何か問題のある人」ではないかと考える傾向があります。
昭和の価値観では確かにその通りなのだと思いますし、私も昭和生まれですからその気持ちが全く分からないという訳ではありません。ですから私のことを「根性なし」だとか「こらえ性がない人」などと思う人がいたとしても、それは仕方のないことだと思います。
しかし、私の本音を言わせてもらえば、現代社会では転職をしないことは一つのリスクであると考えています。
この記事では50歳になるまでに6回の転職を経験した私が感じた転職しないことのリスクについて書いていきます。
転職するのは悪いことなのか
昭和のサラリーマンにとっての理想の働き方とは、学校を卒業して最初に就職した会社で定年退職まで勤め上げることでした。そしてもし、途中で転職をすれば、次の職場での待遇はそれまでよりも悪くなるというのが一般的な考え方でした。
今でもこのような考え方を持っている人が意外に多いことに驚かされます。例えば、以前私が勤めていた会社の人事部が社員の中途採用をする時に行う書類審査などでも、入社から1年以内に会社を辞めている人に対する評価は低く、書類だけで落としているケースもけっこうありました。
でもよく考えてみて下さい。世の中にはたくさんの会社があり、それら全ての会社が素晴らしい会社という訳ではありません。ブラック企業やそれに近い会社も多いでしょうし、会社がブラックでなくても上司がブラックな場合だって少なくはありません。
そんな会社にたまたま入社してしまったとしても「履歴書が汚れるのが嫌だから1年は我慢する」なんて考えて無駄な時間を過ごしながら自分をすり減らすことに何の意味があるでしょう。
「この会社はダメだ」「この会社に将来はない」「こんな上司の下では働けない」と思ったら、会社になるべく迷惑をかけない範囲で可能な限り早く転職すべきなのです。このような転職は合理的かつ賢明な判断である限りにおいて、決して悪いことではありません。
転職のチャンスを逃さないための準備
ビジネスモデルの短命化
長年金融業界で働いてきて痛感しているのがビジネスモデルの短命化です。このブログを書いている2017年時点での私のイメージですが、優れたビジネスモデルであってもその寿命は10年を切り始めているように感じています。
当然ながら経営サイドもビジネスモデルの短命化は把握していますので、常に変化を求めてチャレンジを繰り返しています。にもかかわらず正しい進化を遂げることができるのは一握りの企業だけであり、その裏側には無数の企業が進化しきれずに消えているのが現実です。
新しい船に乗り込むための準備
あなたが勤めている会社を船に例えると、あなたの乗っている船の状況や周辺の海図、最新の気象情報などには常に気を配っておく必要があります。そして最も大切なことは、いつ今の船が沈んでも別の船までたどり着けるような準備をしっかりとしておくことです。
もし、「この船は先が長くなさそう」「新しくできた船がすごくよさそうだ」と思ったら救命ボートがあるうちに別の船に乗り換えるのが正しい判断です。
ただし、別の船に乗り換えられるのは、常日頃から別の船でも必要とされるスキルを磨いていた人だけであるということを忘れないで下さい。
何度も転職を繰り返しながら自らの市場価値を高めることができる人は「なにか問題がある人」でなく、決して会社に自分の生活を依存せず、常に会社と対等の立場で行動できる「自由人」であると言えます。
人生前半の経験値が後半の人生を決める
厚生労働省が作成した平成28年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性が80.98年、女性が87.14年となっており、男女とも過去最高を更新していることは以下の記事でも書きました。
普通に会社で働けるのは60歳からせいぜい65歳までです。それから先は自分の居場所だった会社から追い出され、これまでの地位や肩書もなくなります。
自ら主体的に社会との関わりを持つ努力をしない限り、あなたの第二の人生はとても狭い範囲で生きることを強いられることになるでしょう。
退職後の第二の人生をこれまで以上に尊厳と輝きに満ちたものにするための最大の武器。それは、第一の人生で積み上げた経験とスキルです。そして、そのスキルや経験を身につける最も効率的な手段の一つが転職なのです。
今の仕事の空き時間や休みの日を利用して、新たなスキルを身につけたり経験を積み上げることは誰にとっても容易なことではありません。
しかし、もしあなたが「興味のある」、「自分の好きな」、あるいは「将来有望な」他の業界へと転職すれば、今と同じように仕事に打ち込むことで新しいスキルや経験を習得することができます。
ポジティブかつ戦略的な転職は、きっとあなたの第二の人生を素晴らしいものにしてくれるではずです。
まとめ
- 合理的な判断に基づく転職は人生におけるポジティブな決定であり決して悪いことではない。
- 会社にしがみついて自分の人生を会社に依存する生き方はリスクでしかない。
- 自身の市場価値を高める転職を繰り返せる人は、会社と対等の立場で働く「自由人」。
- 定年退職後の人生を輝かせるには定年前に習得したスキルと経験が最大の武器になる。