初心者が知っておくべき投資信託の出口戦略とは【積立投資・スポット投資】

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出口の標識

2017年10月の日経平均株価は史上初の16営業日連続の上昇を見せ、前月比で8%の上昇相場となりました。多くの個人投資家が株価上昇によって手持ちの株式や投資信託に含み益を持つ今の状態は、更なる株価上昇への期待と、いずれはやってくる相場の天井からのピークアウトへの不安が入り混じっている状態だと言えます。

バブル時代から金融業界で個人投資家の取引を見てきた私が常々思うことは、投資の入り口で失敗する個人投資家は比較的少ないにもかかわらず、出口戦略で失敗してしまう個人投資家が非常に多く、そのいせいで儲からない個人投資家の数が必要以上に増えているということです。

そこで今回は、初心者の皆さんに知っておいてもらいたい投資信託への投資における出口戦略について解説していきます。

スポット投資の出口戦略

同じ投資でも積立投資とスポット投資では出口戦略が異なります。投資のタイミングを考慮して取引するのがスポット投資です。買うタイミングと売るタイミングの両方を自分の裁量で決めるスポット投資は比較的短期間で利益を狙うことができる反面、タイミングだけでなく価格変動の方向性についても予測を的中させなければならないため、かなりの投資経験とセンスが求められる投資手法です。

スポット投資の出口戦略は非常にシンプルで、投資のスタート時点で2つの出口を決めておくことに集約できます。一つ目の出口とは事前に予想する期待収益率から「利食いのポイント」を決めておき、それを超えたら決済を行うというものです。もう一つの出口が事前に予想する期待収益率から逆残して「損切りのポイント」を決めておき、そのポイントに来たら無条件で決済するというものです。

利食いの金額よりも損切りの金額が多いような取引を繰り返していくと、小さな利益の積み重ねを1回の大きな損失が消し去ってしまうようなことになりますし、あまりに小さな損失で決済を繰り返していると大きな利益を撮り損ねてしまうことにもなりかねません。このあたりのバランス感覚に優れた個人投資家にとって、スポット投資は楽しいマネーゲームなのですが、初心者の方には少しハードルが高い取引手法となります。

積立投資の出口戦略

相場の天井で売ることは考えない

積立投資の本質は投資するタイミングを選ばないことにあります。タイミングを見計らって安い価格で買うことを放棄した代わりに、毎月決まった金額で特定の投資信託を購入する「ドルコスト平均法」を利用した積立投資を選んだ訳です。ドルコスト平均法の利点は、価格が低い時には多く買い付け、価格が高い時には少なめに買い付けることによって買い付け価格を自動的に平準化できることにあります。

買い付けるタイミングを選ばない積立投資において、積立てた投資信託を売るタイミングを選ぶという行為は矛盾していると言えます。しかしながら、含み益が増えてくるとそれを確定したくなるのが人情というものです。現実に、株式市場が大きく上昇した2017年10月の投資信託市場全体では新たに投資信託を買う金額を1000億円も上回る投資信託の売りが出ています。

特に国内株式に投資するタイプの投資信託については9月、10月と連続して資金純増額がマイナスとなっており、10月単月でも2584億円もの資金が利食いによって投資信託市場から流出しています。ここで注目したいのが、9月単月でも1746億円の資金が利食いによって投資信託市場から流出しており、9月に投資信託を売った人は10月の上昇分を撮り損ねているという事実です。このことは10月に投資信託を売った人にも起こりうる可能性があり、「相場の天井で売る」という行為が不可能であることを物語っています。

投資信託を売る理由で戦略を決める

出口戦略を考える上で重要なことは、どうして投資信託を売るのかという理由です。急な資金需要が出来たのであれば、資金が必要となる日までの期間内でなるべく分散して売却するというのが最も合理的な出口戦略になります。

ご自身の相場観として市場価格が天井に近づいているという確信をお持ちであるなら、ご自身が天井であると思う価格に到達したら半分程度を売却し、残りの半分は様子を見ながら少しずつ売却していくという方法をお勧めします。

売却益にかかる税金に注意が必要

売却後に同じような投資信託に投資するつもりなら、売った価格よりもかなり低い価格で買い直す必要があります。売却する直前にあった含み益からは税金が差し引かれ、その分だけあなたの資産は減少してしまいます。従って、減少した資産に見合う以上の値下がりがなければ再投資する意味がありません。

ご存知の通り、ここ数年で設定された投資信託は以前の投資信託と比べて信託報酬が低いものが増えてきています。信託報酬は毎年差し引かれるコストであり、運用期間が長いほどリターンへの影響が大きくなるため、古くから積立投資してきている信託報酬の高い投資信託から、最近設定された信託報酬の低い投資信託に乗り換えたいという気持ちは理解できます。

ただし、売却時に売却益から差し引かれる税金の分だけ資産が目減りしてしまい、目減りした資産分だけ複利効果が消滅してしまうことには注意が必要です。僅かな信託報酬のために大きな複利効果を失ってしまうというのは本末転倒です。投資信託の乗り換えは損切りと合わせて行うか、大きな利益が出ないタイミングで行うようにしましょう。

積立投資はiDeCoの利用枠を活用

売却時にかかる税金で資産を減らすことを防ぐには非課税制度を利用するのが一番です。現在利用できる非課税制度には「一般NISA」、「iDeCo」、来年から始まる「「つみたてNISA」の3つがありますが、「一般NISA」は非課税期間が5年しかないため積立投資には不向きです。「つみたてNISA」は20年の非課税期間がありますが、投資信託の乗り換えについては最大でも年間40万円までという制限がありますので積極的に乗り換えるような投資戦略を取りづらい面があります。

そこで注目すべきはiDeCoです。iDeCoは積立てた金額の全てが所得から控除されるため、所得税と住民税が毎年安くなります。例えば、年収300万円のサラリーマンが毎月2万3000円ずつ積立てたとすると毎年4万円程度の節税が可能となります。

iDeCoは年金制度ですので、60歳まではお金を引き出すことはできませんが、投資信託の乗り換えは非課税で自由に行うことができますので、利食いによる資産の目減りを気にすることなく、好きなタイミングで売買を行うことができます。

老後にむけた長期的な資産形成はiDeCoを利用し、将来取り崩す可能性のある資金は「つみたてNISA」を利用して非課税で運用するという使い分けで上手に金融資産を積み上げていくための具体的な方法につきましては以下の記事にまとめてありますので、是非ご覧下さい。

この記事では「iDeCo」と「つみたてNISA」のメリットやデメリットについて説明し、これらを組み合わせて利用することで計画的に老後資金を積み立てていくための具体的な方法について解説しています。

まとめ

毎月定額を買い付けた投資信託の出口戦略として最も有効な戦略は毎月定額ずつ売却するという方法です。そうは言うものの、大きな含み益を抱えてしまうと、それが目減りするまえに確定させてしまいたいという欲望に勝てないのが人間の本質なのかも知れません。

含み益を実現益にした後で、手にしたお金の使い道が決まっているならばそれで問題はありません。ただし、再投資を考えるのであれば、税金分の資産の目減りを覚悟の上で慎重に再投資のタイミングを探す必要があります。

そのようなことを避けるために「iDeCo」の利用を検討してみて下さい。大きな節税メリットを活かしながら60歳までの非課税運用ができる「iDeCo」を利用すれば投資信託の乗り換えも自由に行うことができます。共働きであればご夫婦で利用することにより、運用枠も2倍になりますので、公的年金の上積みとして十分な資産を積み上げることができるはずです。