「つみたてNISA」で事前の人気が高かった3本の投資信託の純資産額から繰上償還リスクをチェック

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「つみたてNISA」のスタートを前に、各運用会社は低コストで魅力的な投資信託を新たに設定し、激しい競争を繰り広げてきました。

個人投資家にとってはありがたい状況ですが、新たに設定されたばかりの投資信託は純資産を集めることができなければ繰上償還のリスクが高くなりますので注意が必要です。

この記事で記載されている投資信託の純資産額は2018年4月13日の最新データに更新しています。

投資信託の繰上償還のリスクとは

「つみたてNISA」の対象となる投資信託は低コストで魅力的なものが多く、ご自身が投資する投資信託を選ぶのに苦労された方も多いのではないでしょうか。事前の人気が高かったのはやはり信託報酬が低いインデックスファンドでしたが、設定されたばかりのものも多く、純資産が低いものが目立ちました。

純資産額の低い投資信託では繰上償還のリスクについて警戒しておく必要があります。繰上償還とは、あらかじめ決められていた信託期間よりも短い期間で運用が終了する、あるいは信託期間が決められていなかった投資信託の運用が終了することを言います。

投資信託の運用が終了してしまう理由は様々です。ただ、「想定していた以上のリターンが早めに実現した」というようなポジティブな理由による繰上償還よりも、「運用会社や顧客が儲からないから」というネガティブな理由による繰上償還の方が多いように思います。繰上償還につきましては以下の記事でくわしく解説しています。

10年以上の運用期間を前提とした「つみたてNISA」の利用においては無視できないのが投資信託の繰上償還リスクです。今回は、投資信託が運用会社の都合で運用を終了してしまう繰上償還リスクとその回避法について解説していきます。

新しい投資信託では純資の増え方が重要

運用がスタートしたばかりの投資信託の場合、何年、何十年という運用期間がある投資信託に比べて純資産額が少ないのは当然のことです。短期間に1兆円を超えるような投資信託も存在しますが、そのほとんどが販売手数料や信託報酬が割高なアクティブ運用の投資信託であり、販売会社の営業努力によって達成された数字であると考えられます。1兆円ファンドにご興味がある方は以下の記事で解説しています。

野村證券の誕生100周年を記念し、当時の野村証券がグループの全勢力をあげて売り出した、1兆円という前代未聞の募集額を誇った「ノムラ日本株戦略ファンド」。このファンドの悲劇の17年から私たちは長期投資についての大切なことを学ぶことができます。

「つみたてNISA」の目的は「長期・積立・分散」によるメリットを活用した投資を実践することで個人が効率よく金融資産を形成していくことです。そのために金融庁は長期投資に適した投資信託の条件として信託報酬に注目し、信託報酬が低い投資信託が長期投資に適しているという結論を出しています。

信託報酬とは運用会社が投資信託を運用するコストとして投資信託を保有する人から毎年徴収する手数料のことですが、多くの場合、実際に運用会社の手に渡るのは信託報酬の半分前後で、残りの大半は販売会社の取り分となっています。

信託報酬は投資信託の純資産額に対して一定の割合が支払われる仕組みになっています。例えば信託報酬が0.2%の投資信託の純資産額が100億円の場合、1年間に支払われる信託報酬は100億円に対して0.2%ということですので、2000万円という計算になります。

仮にこの投資信託の純資産額が10億円まで減少した場合の信託報酬は年間200万円となってしまい、運用会社にはその半分の100万円しか入ってきません。1年間に100万円の報酬では、有価証券の売買手数料やファンドマネージャーへの報酬などを考えると赤字となる可能性が高く、このような投資信託の運用を続ける意味が無くなってしまい、最終的には繰上償還によって運用を終了することになります。

このような理由から、新たに設定した投資信託は、できるだけ早い段階で純資産が損益分岐点を上回る水準まで増加することが期待されており、期待が外れた場合には繰上償還のリスクが高まります。

事前の人気が高かった3本の投資信託

「つみたてNISA」の口座開設がスタートしたのは2017年10月2日ですので、この日を基準日として2018年2月15日の純資産の状況を、事前の人気が高かった投資信託ごとに見ていくことにしましょう。

楽天・全世界株式インデックス・ファンド

「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」は全世界で購入可能な株式の98%をカバーしている「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」をベンチマークとしている「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」を投資対象にした投資信託です。

これ1本で「日本の国内株式」「先進国株式」「新興国株式」にバランス良く投資することができ、面倒なリバランスなども全く不要です。「つみたてNISA」における株式資産への投資はこれ1本で十分であり、「投信ブロガーが選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー2017」においても第1位に選ばれている人気のファンドです。

2017年10月2日の純資産額は500万円、2018年4月13日の純資産額は63億1100万円となっています。2017年9月28日に募集を開始したファンドですので純資産額についてはほぼゼロからのスタートであったにもかかわらず、既に約60億円の純資産額になっていることからもこのファンドの人気の高さは証明されています。

ちなみに、受益権の口数が10億口を下回ることが繰上償還のトリガーとなっていますので、現時点においての繰上償還のリスクは極めて小さいと言えるでしょう。

楽天・全米株式インデックス・ファンド

「楽天・全米株式インデックス・ファンド 」は「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」をベンチマークとしている「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」に投資する投資信託です。「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」は米国株式市場の大型株だけでなく中小型株も含めた約4000銘柄から構成される株式指数であり、米国株式市場の動きを忠実に反映します。

2017年の「投信ブロガーが選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー」でも第3位にランクインしている人気のファンドで、これ1本で米国市場の全ての株式に投資することができます。「投信ブロガーが選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー」につきましては以下の記事で解説しておりますので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。

年に1度、個人投資家がその年に最も魅力的だと感じた投資信託を選ぶ「投信ブロガーが選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー」ですが、2017年の結果を見ると「つみたてNISA」の影響を受けた順位付けとなっており、上位10本に選ばれた投資信託だけで素晴らしいポートフォリオが組めそうです。

2017年10月2日の純資産額は500万円、2018年4月13日の純資産額は94億6600万円となっています。このファンドも「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」と同じ2017年9月28日に募集を開始したファンドです。純資産額は「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」を上回る約94億円となっており、「つみたてNISA」以外の口座でも人気になっていることが分かります。

こちらも、受益権の口数が10億口を下回ることが繰上償還のトリガーとなっていますので、現時点においての繰上償還のリスクは極めて小さいと言えるでしょう。

eMAXIS Slim先進国株式インデックス

「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」は日本を除く世界の先進国における株式市場に投資を行う「MSCIコクサイ インデックス」に連動するインデックスファンドですが、最大の特徴は0.12%という驚くべき信託報酬の低さです。

2017年10月2日の純資産額は16億6800万円、2018年4月13日の純資産額は91億900万円となっています。受益権の口数が10億口を下回ることが繰上償還のトリガーとなっていますので、こちらのファンドも現時点における繰上償還のリスクは極めて低い、人気ファンドであると言えます。

まとめ

「つみたてNISA」に限った話ではありませんが、長期投資を行う場合、投資対象の投資信託が数年足らずで繰上償還になってしまうようなことになると、複利効果によるリターンのアップが狙えなくなってしまいます。

人気のある投資信託を買えという意味ではないのですが、長期積立投資においては、繰上償還にならない程度の純資産額を維持できる(あるいは維持している)投資信託を選ぶことが最低限の条件となります。

投資信託の純資産額は投資家の心理状態を反映しており、必ずしも右肩上がりに推移するとは限りません。従って、保有する投資信託の純資産額につきましては定期的にチェックしておく必要があります。