「つみたてNISA」の対象ファンドは2018年4月13日時点で144本ですが、そのうち128本は特定の指数に連動するインデックスファンドです。
「つみたてNISA」がスタートした1月から2月末までの2ヶ月間で資金流入の多かったファンドを見てみると、選ぶべきファンドと選んではいけないファンドが混在していることに気が付きます。
INDEX
上位5本のうち4本が日経平均連動型
「QUICK資産運用研究所」の調べによると、「つみたてNISA」の対象ファンドの中で、資金流入額が多かった上位5本は以下の通りです(「信託報酬」、「純資産」、「設定年」につきましては2018年4月13日時点での数字を当ブログにて調査して記載しています)。
順位 | ファンド名 | 信託報酬(税込) | 純資産額(億円) | 設定年 |
---|---|---|---|---|
1 | 野村 インデックスF・日経225 | 0.43% | 367 | 2010年 |
2 | ニッセイ 日経225インデックスファンド | 0.27% | 1365 | 2004年 |
3 | eMAXIS 日経225インデックス | 0.43% | 273 | 2009年 |
4 | <購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド | 0.2% | 822 | 2013年 |
5 | SMT 日経225インデックス・オープン | 0.4% | 197 | 2010年 |
上位3本は「つみたてNISA」とは無関係
「つみたてNISA」の利用者はこれまでの一般NISAに比べて投資経験の浅い、あるいは未経験の人が多いことから、最も身近で、日常生活の中でも話題になりやすい株式指数である日経平均株価に連動する投資信託を選ぶというのは自然な流れなのかも知れません。
ただし、上位3本の投資信託を見ると、本当に投資経験の浅い人、あるいは未経験の人が自主的に選んだのかどうかという点は疑問です。どちらかと言えば、それなりに投資経験があって、かなり以前からこれらのファンドに投資してきた人による資金流入が大半であるように思えます。
上位3本の投資信託は2010年よりも前から運用されており、「つみたてNISA」がスタートする前年である2017年の資金流入額は3本ともマイナスとなっています。これら3本のファンドは2017年だけでも17%以上のリターンを出しており、2017年の5月、6月、9月に利益確定を目的とした大量の売却が目立ちます。
これらの事実から考察すると、上位3本のファンドについては「つみたてNISA」とは関係のない個人投資家が、ここ数年の日経平均の値上がりによって発生していた含み益を2017年に実現利益にするために売却し、2018年の日経平均の値下りを見て再購入した結果であると思われます。
「つみたてNISA」はコストを重視
「つみたてNISA」を利用している若年層の投資家はネットリテラシーが高く、情報を効率よく集めて比較検討する能力が高いと考えられます。少なくとも当ブログの読者の皆さんが、日経平均に連動する投資信託を選ぶ場合、信託報酬として毎年0.43%も徴収される「野村 インデックスF・日経225」や「eMAXIS 日経225インデックス」を選んで投資するとは考えられません。
恐らく読者の皆さんであれば、信託報酬が0.2%未満のファンドの中から、繰上げ償還のリスクを考慮して純資産額が20億円以上のファンドを選ばれるはずですし、国内株式に投資するなら日経平均よりもむしろTOPIXに連動するファンドを選ばれる方のほうが多いのではないかと私は考えます。
それでもニッセイの実力は高く評価
2位にランクインしている「ニッセイ 日経225インデックスファンド」の設定日は2004年となっており、上位5本のファンドの中では最も設定日が古いファンドです。
投資信託の信託報酬は時代と共に低くなってきているイメージがありますが、「ニッセイ 日経225インデックスファンド」が設定された6年後の2010年に設定された「野村 インデックスF・日経225」や「SMT 日経225インデックス・オープン」の信託報酬が0.4%を上回っているのに対し、「ニッセイ 日経225インデックスファンド」の信託報酬は0.27%となっており、設定から10年以上の年月が経過した今でも決して高いとは言えない信託報酬率を維持しています。
ちなみに、ニッセイアセットマネジメントは2016年11月に新しく「<購入・換金手数料なし>ニッセイ 日経平均インデックスファンド」を信託報酬0.18%(税抜)で設定し、2018年2月16日に信託報酬を0.169%(税抜)に引下げています。
これから「つみたてNISA」で利用するなら信託報酬が0.27%の「ニッセイ 日経225インデックスファンド」よりも0.18%(税込)の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ 日経平均インデックスファンド」を選択する方がいいでしょう。
6位以下は魅力的なファンドが大集合
「つみたてNISA」の対象ファンドの中で、資金流入額が多かったファンドの上位6位~10位のファンドは以下の通りとなっています。
順位 | ファンド名 | 信託報酬(税込) | 純資産額(億円) | 設定年 |
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6 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド | 0.17% | 94 | 2017年 |
7 | eMAXIS Slim先進国株式インデックス | 0.12% | 91 | 2017年 |
8 | 楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 0.24% | 63 | 2017年 |
9 | eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) | 0.17% | 104 | 2017年 |
10 | つみたて日本株式(TOPIX) | 0.19% | 20 | 2017年 |
楽天・全米株式インデックス・ファンド
5本全てのファンドが「つみたてNISA」を意識して2017年に設定された各運用会社の戦略商品ばかりです。6位の「楽天・全米株式インデックス・ファンド」は米国株式市場に連動する投資信託ですが、大型株、中型株だけでなく小型株も対象に4000銘柄以上に広く投資するのが特徴です。
ちなみに私もこのファンドを「つみたてNISA」で利用しています。「楽天・全米株式インデックス・ファンド」につきましたは以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。
「ニッセイ」VS「三菱UFJ国際」
7位の「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」は4位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド」と同じ「MSCIコクサイ・インデックス」をベンチマークとしたファンドです。「MSCIコクサイ・インデックス」は日本を除く22カ国、1328社の株価の動きに連動する指数であり、既に日本の株式市場に投資している人が世界の先進国に分散投資をする際に利用されます。
「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」は「eMAXIS Slimシリーズ」のファンドであり、常に競争力を意識した信託報酬が設定されます。具体的には「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の信託報酬は0.12%であり4位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド」の0.2%を大きく下回っています。
「eMAXIS Slimシリーズ」は「他社の値下げの動きに対して機動的に対応する」ことを宣言していますので、海外の先進国に投資するなら「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」を選んでおく方が安心です。
1本のファンドだけで分散投資
8位の「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」はこのファンドだけで日本も含めた世界中の先進国、新興国の株式市場に分散投資することができます。最もシンプルに世界の株式市場に投資する手段としては最高の選択肢の一つです。
9位の「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」は「eMAXIS Slimシリーズ」のバランス型ファンドです。日本国内、先進国、新興国の株式や債券、不動産に分散投資する投資信託ですが、信託報酬がわずか0.17%という低さで設定されているのが人気の秘密です。
国際分散投資と言っても株だけに投資するのは怖いという人が債券や不動産も含めて分散投資する際に利用されますが、8資産均等型のバランスファンドでは運用資産の25%を新興国の株式と債券に投資することになります。
新興国への投資比率は時価総額ベースで考えると8%程度が適切ですので、25%という比率はそれなりにリスクが高いことは理解しておきましょう。
10位の「つみたて日本株式(TOPIX) 」は日本の株式市場に投資する時の選択肢として、上位3本のファンドと比べるとストパフォーマンスに優れた投資信託となっています。
ただし、TOPIXに連動する投資信託では「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」の信託報酬が0.17%と最も低く、純資産も21億円に達していますので、あえて「つみたて日本株式(TOPIX) 」に投資する理由はないかも知れません。
まとめ
1月からスタートした「つみたてNISA」ですが、個人的には非常に理想的なスタート環境だと考えています。
「つみたてNISA」は始まったばかりですので、今後も様々なデータが公表されると思いますが、確定拠出年金のように専用のファンドというものがありませんので、データを分析する際には注意が必要です。
「つみたてNISA」で成功するためには「分散投資」の実行が欠かせません。個人的には日経平均に連動するファンドだけに投資するのではなく、国際分散投資を行うことをオススメ致します。また、相場の上げ下げに一喜一憂することなく積立てを長期に渡って継続することが成功に近づく唯一のアプローチです。